定期健康診断の運用、どうしたらいい? 病院選定の方法から、書類保管までのすべて

この記事でわかること
  • 定期健康診断の必要性、未実施のリスク、対象者、時期、費用など
  • 対象者や病院選定、書類保管までの、手続きの流れ
  • 健診日の賃金はどうなるか?など

基礎知識

定期健康診断とは、1年に1回、企業が義務として行う、従業員の健康診断のことです。

なぜ必要?

・従業員が健康に働けるよう、企業として健康状況を把握し、健康管理に努める必要があります。
・安全衛生法で、医師による健康診断の実施が労使双方に義務付けされています。
・従業員本人が疾病を発見したり、予防することができます。

リスク

定期健康診断を行わない、もしくは適切に運用しなかったとき、企業は以下のようなリスクを背負います。

【それぞれ50万円以下の罰金】

健診の未実施、本人に健診結果の通知をしない、健診の結果を保管していないとき

【安全配慮義務違反が問われる可能性】

・健診未実施や、結果の通知を怠った結果、従業員の疾病を悪化させたとき
・健診後、必要に応じて仕事をするうえでの措置(労働時間の短縮、配置転換など)を行わなかったとき
・未実施で、労災などが起きたとき

対象企業

企業規模は関係なく、すべての事業所で実施が必要です。

対象者

定期健康診断の対象者は、社会保険の加入対象者が目安です。

・正社員
・週の労働時間が正社員の3/4以上で、1年以上雇用される予定または1年以上雇用されている従業員

実施期間

・1年以内ごとに1回
・特定業務従事者は、定期健康診断と同じ内容の健康診断を6か月以内ごとに1回受ける必要があります。

費用

・企業が全額を負担します。
・金額は医療機関によりますが、1人当たりおおよそ8,000円~10,000円程度が一般的です。
・協会けんぽと契約している健診機関で受診すると、最高7,169円となっています。

参考|協会けんぽホームページ

 

やること

対象者をまとめる

定期健康診断の対象者をまとめます。(参考|基礎知識:対象者)

希望する病院に予約する

基本的には企業が病院を指定します。(参考|Q&A:病院は決まっていますか)
病院を選んだら、選択した病院の手続き方法に沿って、予約をします。

本人へ健診日を通知し、受診してもらう

本人へ健診日を通知します。一般的にはメールや書面が使用されます。口頭でも構いませんが、通知の履歴が残っていると、間違いがなくてよいでしょう。

POINT

本人の業務予定などを勘案し、健診スケジュールを組みます。人数が多い場合、誰がどの順番で業務を抜けるかを、掲示などで周知確認する会社もあります。

その後は、予約した日時で、定期健康診断を受けてもらいます。

結果を病院から会社が受け取る

全従業員の健診結果が、企業に届きます。受け渡しの方法は病院により異なりますが、郵送されることが多いでしょう。受診日が従業員によって大きくずれた場合は、複数回に分けて受け取るケースも出てきます。

注意点

定期健康診断の結果は個人情報なので、取扱いには細心の注意を払いましょう。

本人へ、結果を文書で通知する

渡し間違いがないよう、直接本人へ渡します。異常所見があれば、必要に応じて「配置転換・短時間勤務・深夜業の回数削減」などの、就業上の措置を実施します。

結果を健康診断個人票へ記載する

健診結果を、健康診断個人票へ記載します。健康診断個人票は労務上必要な書類ですが、用意できていない企業もあります。その場合も、健診結果の保管だけは必ず行っておきましょう。

【50人以上の企業の場合】
定期健康診断の結果(定期健康診断結果報告書)を、管轄の労基署へ遅滞なく提出します。

参考|厚生労働省 定期健康診断結果報告書様式

 

よくある質問

Q:どのような項目の健診を受けますか?

項目は、安全衛生法で決まっています。
参考|実施項目

Q:病院は決まっていますか?

決まっていません。
法令で定められた健診項目をすべて実施してくれる医療機関であれば、どこでも構いません。
参考|協会けんぽホームページ

Q:従業員が健診を拒否したらどうしますか?

従業員は健診を受ける義務があります。
拒否されたら、企業は「受診命令」を出し、健診を受けた結果の提出を求めることができます。その際は、健診を受けるよう促した通知やその経緯を記録し、やり取りを書面で残しておくことが大切です。就業規則に、受診拒否の場合の対応と、懲戒処分に関する規定を入れておくとよいでしょう。

Q:健診日の賃金はどうなりますか?

健診中の賃金の支払いは、法律では決まっていません。一般的には支払っている企業が多いです。

Q:異常所見ありで返ってきたらどうしたらいいですか?

健診結果に異常所見があれば、企業が、受診した病院の医師に就業可否を聞くのが企業の義務です。就業に関する措置について、「必要・不要・就業禁止」のどれかの判断が下りますので、「必要」といわれたら就業上の措置(配置転換・短時間勤務・深夜業の回数削減)などを行います。就業禁止の判断が出たときは、休職させることになります。

二次健康診断の通知が来たときは、従業員に受診を促します。
ただし二次健康診断の結果は、企業に保管義務はありません。

Q:結果の保存期間は何年ですか?

健康診断結果(もしくは健康診断個人票)をファイリングし、5年間保管する義務があります。労働基準監督署の調査が入ったときや、労災が起きたときなどに、提出を求められることがあります。

 

難易度と必要性
難易度
★☆☆
必要性
★★☆
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

健康診断の実施率は、従業員数が少ない会社ほど低くなりますが、人数にかかわらず実施しなくてはいけません。未実施はれっきとした法律違反です。管理職だけ・長く在籍している人だけの実施も違反です。対象者漏れ・連絡漏れがないよう、管理表を作成してチェックしながら進めます。また、健康診断の結果は重要な個人情報であること、就業措置がいるときは、企業で勝手に判断せず医師の意見なども聞く必要があることも理解しておきましょう。

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