- 解雇予告除外認定の制度を知る
- 解雇予告除外認定の基準の確認、書類の作成など
- 解雇予告除外認定を受ける前に、解雇はできますか?など
基礎知識
解雇は繊細に扱う必要がある手続きです。それをさらにネガティブにしないためにも、正しい手順を踏めるようにしておきましょう。
言葉の定義
解雇予告除外認定とは、解雇予告をしなくても従業員を即時解雇できる制度です。
解雇予告を除外できるのは次のいずれかの理由のときです。
①天災やその他やむをえない理由のため、事業を継続できなくなったとき
②従業員の故意または過失による、解雇されても仕方がない理由があるとき
ただし事前に労働基準監督署へ解雇予告の除外の届出をし、認定をもらっておく必要があります。解雇予告の除外が認められると、解雇予告手当の支払いの必要がなくなります。ここでは、②について記載しています。
なぜ必要?
解雇予告除外認定を受けると、解雇予告は行わなくてもよくなります。つまり、解雇予告手当の支払いが不要になります。
リスク
従業員に原因があり即時解雇するときに、解雇除外認定を受けていないと解雇予告手当の支払いが必要になります。
対象企業
従業員を雇用しているすべての企業
対象者
懲戒処分になる従業員
実施期間
解雇する前
メリット
解雇予告手当の支払いをせず、即時解雇できます。
デメリット
事前に労働基準監督署へ届出が必要なため、早めに届出をしておかないと懲戒解雇を従業員に伝える前まで認定がされず、解雇予告手当の支払いが必要になります。
やること
従業員の不正行為や非行・違反行為が発覚する
不正行為などが発覚したときは、まず関係者に事実を確認します。その行為に対して、従業員から経緯書や顛末書(てんまつしょ)など客観的に判断できる書類を提出してもらいます。
社内で対応を検討する
その行為が就業規則の懲戒事由にあたるのか、慎重に検討します。処分を行うときは、企業は従業員に説明を行い、行為について弁解の機会を与えなければいけません。
解雇予告除外認定申請書を作成する
懲戒解雇の前に、解雇予告が除外になるよう除外認定書を作成します。解雇予告除外認定の基準にあてはまっているか確認をし、作成を進めます。認定の基準は、企業の懲戒事由の内容とは別に法令等で定まっています。
【解雇予告除外認定の基準】
①職場内の窃盗、横領、傷害などの刑法犯に該当する行為をしたとき
②賭博をしたり、風紀を乱し職場の規律を崩す行為をしたとき
③採用の重要な要件となる経歴を詐称したとき
④他の企業へ無断で転職したとき( 信頼・信用を裏切る就職を含む)
⑤2週間以上、正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じないとき
⑥出勤不良で、数回にわたって注意を受けても改善しないとき
⑦企業の名誉、信用を著しく失わせる行為をしたとき
⑧取引先との関係に悪影響を与え、信頼関係を失わせるような行為をしたとき
解雇予告除外認定申請書を届出する
解雇予告除外認定申請書を作成後、管轄の労働基準監督署へ届出します。添付書類(経緯書や就業規則など)は管轄の労働基準監督署によって異なりますので事前に確認をしてください。解雇予告の除外は従業員にとって負担が大きいため、届出後、労働基準監督署が直接本人に事実確認のヒアリングを行います。
添付書類:経緯書、就業規則など
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参
解雇予告除外認定を受ける
認定書が企業へ郵送で届きます。
認定までの期間は届出から約1~3週間かかります。
懲戒解雇を行う
解雇予告除外認定を受けた後、処分内容を従業員に通知し懲戒解雇を行います。
解雇予告が除外されているので、解雇予告手当の支払いは必要ありません。
よくある質問
Q:解雇予告除外認定を受ける前に、解雇はできますか?
できます。
ただし解雇予告が必要になり、解雇日までの期間が30日未満のときは解雇予告手当の支払いが発生します。
Q:解雇予告除外認定を受けると、法律で解雇を認めたことになりますか?
なりません。
解雇除外認定は、法律的な拘束力はなく、労働基準監督署による事実の確認になります。そのため、裁判などになったときは解雇が無効なることもあります。
Q:労働基準監督署が従業員に、解雇予告除外認定の内容の確認をとれなかったときはどうなりますか?
原則、解雇予告除外の認定がされません。
企業の一方的な内容だけでは、労働基準監督署は原則として、解雇除外認定を行なわず不認定とします。客観的に証明できる書類がそろっているときは、認定されるケースもあります。
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
解雇予告除外認定には、事実確認や状況がわかる客観的な資料が必要になります。日頃から、トラブルなどが起きたときは「経緯書」「顛末書」「始末書」などの書類を従業員から提出してもらうようにしておきましょう。
懲戒処分は、従業員の今後の人生を左右する重大な結果です。処分を行う前に回避できる方法がないかなど従業員と十分に話し合ってください。解雇予告除外認定を受けても、後日、従業員から解雇無効を訴えられて争いになることもあるため注意が必要です。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。