産前産後休業中の社会保険料、免除の制度はどうなっている?

この記事でわかること
  • 産前産後休業中の社会保険料免除の制度を知る
  • 従業員の出産予定日の確認、産前産後休業期間の計算と届出
  • 届出の期限はいつか、手続きを忘れたときはどうなるかなど

基礎知識

見落とされがちな産前産後休業の社会保険料の免除手続きを期限内に正しく行い、不利益が生じないようにします。

言葉の定義

産前産後休業中の社会保険料の免除制度とは、従業員の産前産後期間において、企業と従業員の健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料がともに免除される制度のことです。企業が手続きをしないと、社会保険料の免除を受けることができません。

なぜ必要?

子育て世帯の経済的負担を軽減するためにつくられた制度です。社会保険料の免除の手続きをしないと、企業と従業員ともに社会保険料の負担が発生してしまいます。

リスク

手続きを忘れると社会保険料の免除が受けられず、産前産後休業中も年金事務所から社会保険料の請求をされます。

対象企業

社会保険に加入しているすべての企業

対象者

社会保険に加入している役員、従業員

実施期間

・従業員が産前産後休業を取得する都度
・書類を出産予定日より前に提出している企業で、出産予定日と実際の出産日が異なったとき

メリット

企業と従業員の社会保険料の負担が軽減される

 

やること

出産を控えた従業員から、産前産後休業の申請をしてもらう

従業員の出産予定日を確認し、産前産後休業期間を計算します。産前産後休業の期間は、育児休業申請書(任意書式)で提出してもらうことをおすすめます。

【例】産前産後休業の期間
出産予定日の6週間前(多児妊娠のとき14週間)から、出産後8週間を産前産後休業の期間とします。出産後の8週間は出産日の翌日から数えます。なお、ここでの出産とは妊娠85日以後の、早産や死産、流産や人工妊娠中絶も含んだ分娩を指します。
【例】
出産予定日:10月4日
産前休業期間:8月24日~10月4日
産後休業期間:10月5日~11月29日

健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届の作成をする

従業員が産前休業に入ったら「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届」を作成します。

添付書類:なし
届出先:事務センター
届出方法:郵送または持参 ※事務センターは郵送のみの受付

確認通知書で産前産後休業の開始・終了年月日が正しいか確認する

日本年金機構から確認通知書(健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者確認通知書)が企業へ届きます。この確認通知書に記載されている産前休業開始年月日と、産後休業終了の予定年月日が正しいか確認します。

POINT

【産前産後休業の社会保険料免除期間の数え方】
免除期間は月単位で数えます。具体的には、従業員が産前休業を取得した日の含まれる月から、産後休業が終了した日の翌日の含まれる月の前月までです。

【例】
出産予定日:10月4日
産前休業期間:8月24日~10月4日
産後休業期間:10月5日~11月29日
産後休業の終了日の翌日:11月30日
社会保険免除期間:8月~10月

出産日が出産予定日と異なったときは再度、届出をする

出産予定日よりも前に「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届」の手続きをしていて、従業員の実際の出産日が出産予定日と異なったときは、再度手続きが必要です。
1回目の届出時と同様の流れで「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/(変更)終了届」を作成し、手続きを行います。

添付書類:なし
届出先:事務センター
届出方法:郵送または持参

再手続きを行ったあとは、確認通知書(健康保険・厚生年金保険休業取得者確認通知書)が届くので、産前休業の開始年月日と産後休業の終了年月日が変更となっているか確認をします。

産後休業が予定よりも早く終わったときは再度、届出をする

日本年金機構の事務センターに届出していた産後休業よりも早く従業員が復職したときは、再度「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届」を作成し、手続きを行います。

添付書類:なし
届出先:事務センター
届出方法:郵送または持参 ※事務センターは郵送のみの受付

よくある質問

Q:手続きは、いつまでに行う必要がありますか?

従業員の産前産後休業中に手続きを行います。
出産後の産後休業中に手続きを行うこともできますが、届出をする期間が決まっているため、なるべく産前休業中に手続きを済ませておきましょう。

Q:産前産後休業期間でも、5割の給与を支給しています。給与を支給しているときは社会保険料は免除されないのでしょうか?

従業員への給与支給の有無、給与の金額に関わらず、手続きを行えば産前産後休業中は社会保険料が免除されます。
また、毎月の社会保険料だけではなく、産前産後休業中の社会保険料免除期間に賞与を支払ったときは、賞与にかかる社会保険料も免除になります。ただし、産前産後休業中の雇用保険料は免除されませんので、給与・賞与を支払ったら、雇用保険料の控除を忘れないようにしましょう。

Q:役員の女性が産前産後休業を取得します。従業員ではありませんが免除はできますか?

できます。
役員でも産前産後休業中の社会保険料は免除可能です。

Q:出産予定日から1週間遅れて出産した従業員の、出産日の変更の届出を忘れていました。産後休業期間がすでに終了していますが、今から変更の手続きをしても間に合いますか?

間に合います。
「遅延理由書(任意書式)」に、なぜ手続きが遅れたのか理由を記載して「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届」と一緒に、早急に事務センターまたは年金事務所に提出してください。

遅延理由書には以下の記載等が必要です。

・理由書を作成した日付
・手続きが遅れた理由
・事業所の所在地
・企業名
・事業主名
・事業主の押印

Q:産後休業に入ってから社会保険料の免除の手続きを行いました。払いすぎている社会保険料は返還してもらえますか?

返還してもらえます。
手続きが遅れたことで企業が払い過ぎてしまった社会保険料は、毎月支払っている社会保険料から自動的に相殺をしてくれます。「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書 /(変更)終了届」を提出していれば、相殺や還付が必要な企業に対して、日本年金機構から書面で通知が送られるので、確認をしてください。

Q:社会保険料の免除期間について、保険給付や将来の年金額に影響はありますか?

ありません。
社会保険料の免除期間中も、健康保険は通常通り使えます。また、免除期間も社会保険料を納めた期間と扱われるため、将来もらう年金額に影響はありません。

難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

産前産後休業の社会保険料の免除手続きは忘れやすいものです。届出の期限も決まっているので、従業員が産前休業に入ったらすぐに手続きを行いましょう。
社会保険料の免除が可能な期間に、誤って従業員の給与から社会保険料を控除してしまうケースもあります。自社の給与システムを必ず確認して、社会保険料が控除されないよう確認をするのも大切です。
また、出産予定日がずれると産後休業の終了日も変更になるときがあるため、変更の届出も忘れずに行ってください。

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