賞与の社会保険料、届出できてる? 計算方法と手続きの流れ

この記事でわかること
  • 賞与と社会保険料の関係と、手続きの必要性
  • 賞与の社会保険料の計算と届出の流れ
  • 業績不振のため賞与を支給しません。何か手続きは必要ですか?など

基礎知識

賞与にかかる社会保険料を正しく届出しなければ、将来の年金額などに影響が出てしまいます。

言葉の定義

社会保険料とは、健康保険(介護保険)料と厚生年金保険料のことをいいます。社会保険料は、毎月の給与から決まった額が控除され、賞与は賞与額によって保険料率を掛けて控除します。社会保険は医療・年金・介護など生活を送るために必要な保障です。今回は、協会けんぽに加入している企業のケースを記載しています。

なぜ必要?

賞与の社会保険料の計算方法や年金事務所への届出は、法令等で定まっています。将来の年金などにかかわるので、正しく計算して届出をしなければなりません。

リスク

賞与の届出をしなかったり、虚偽の届出をしたときは、法令等で「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」に課せられる可能性があります。

対象企業

社会保険に加入しているすべての企業

対象者

社会保険に加入し賞与を支払いがある役員・従業員

実施期間

賞与が支払われる都度

デメリット

賞与の社会保険料を正しく計算し年金事務所へ届出をしないと、調査のときに届出のやり直しや訂正が必要になります。その結果、従業員から再度社会保険料の不足分を徴収するなどの作業が発生し、手間だけではなく企業と従業員の信頼関係にも影響がでます。

やること

年金事務所から書類が届く

賞与の支払月前になると、年金事務所から「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」が届きます。

賞与支払届は、賞与支払月の前々月の19日までの企業の情報を元に年金事務所が作成をしているため、在職中の従業員の氏名などがないときがあります。

POINT

送付されてきた書類の枚数などが不足しているときは以下からダウンロードしてください。

賞与を支払い、社会保険料を控除する

賞与を従業員に支給するときに、社会保険料を控除しなければなりません。
社会保険料の計算は以下の通りです(介護保険料含む)。

【計算式】
①賞与額✕(厚生年金保険料率÷2)
②賞与額✕(健康保険料率(介護保険料率含む)÷2)
※「賞与額」は、総支給額(社会保険・税金などの控除する前)から1,000円未満は切り捨てた額で計算します。
【例】
賞与額:235,500円
社会保険料の計算時の賞与額:235,000円

【保険料率】
厚生年金保険料:18.3%
健康保険料:都道府県によって異なります
介護保険料:毎年変動します

健康保険料、介護保険料は協会けんぽのサイトでご確認ください。

参考・ダウロード:協会けんぽサイト
【都道府県毎の保険料額表】|

ダウンロード

※従業員の社会保険料に1円未満の端数がでたときは、50銭未満は切り捨て、50銭以上ときは切り上げになります。
※給与システムなど使っているときは、自動的に計算されることが多いです。

賞与を支払ったら書類を作成する

賞与を支払ってから5日以内にステップ1の「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」を作成し、届出をします。

POINT

①賞与額は、総支給額(社会保険・税金などの控除する前)を記載する。
②「④賞与支払年月日(共通)」に賞与の支払日を記載します。
支払日が異なる従業員のついては、個別で「④※上記「賞与支払年月日(共通)」と同じ場合は記載不要です。」の欄に支給日を記載する。
③70歳以上の従業員は⑦の欄に「マイナンバー」または「基礎年金番号」を記載する。

書類を作成後、年金事務所へ届出を行う

賞与を従業員に支払い、「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」作成後、届出をします。

添付書類:なし
届出期限:支給日から5日以内
届出先:事務センターまたは管轄の年金事務所
届出方法:郵送または持参(事務センターは郵送のみ)

年金機構から通知書が届く

年金事務所から「健康保険・厚生年金保険標準賞与額決定通知書」が企業に届きます。届出の内容と間違いがないか確認をし、企業で保管をします。

よくある質問

Q:業績不振のため賞与を支給しません。何か手続きは必要ですか?

必要です。
「健康保険 厚生年金保険 賞与不支給報告書」を作成し、賞与支払予定月に届出が必要です。届出がないときは、後日、日本年金機構から郵送で届出を促す書面が届きます。

添付書類:なし
届出先:事務センターまたは管轄の年金事務所
届出方法:郵送または持参(事務センターは郵送のみ)

Q:8月20日退職する従業員に、8月5日に賞与を支給しました。社会保険料はかかりますか?

かかりません。
社会保険の喪失日がある月の社会保険料はかかりません。8月20日に退職のときは、喪失日は8月21日なります。8月に喪失日があるので、5日に支払われた賞与には社会保険料はかかりません。ただし「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」で支給額などについては届出が必要です。

Q:育児休業中のため社会保険料が免除になっている従業員がいます。賞与を支給しますが、社会保険料はかかりますか?

かかりません。
社会保険料が免除になっている期間は、賞与を含め社会保険料は企業、従業員ともにかかりません。ただし「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」で支給額などについては届出が必要です。備考欄に「育休中」とご記載ください。

Q:社会保険料は、賞与の支給額にかかわらず計算されますか?

されません。
社会保険料がかかる賞与の上限額は法令等で定められています。
健康保険:4月1日~翌年3月31日までの賞与の累計額573万まで
厚生年金保険:1回の賞与額150万円まで

【例】
賞与支給額が、8月200万円、12月300万円、3月100万円のケースで、健康保険料と厚生年金保険料の計算例をご紹介します。

▼社会保険料がかかる賞与額:健康保険
8月200万円、12月300万円、3月73万円となります。

上記の例の、計算式は以下の通りです。
8月200万円+12月300万円+3月100万円=600万円
600万円ー573万円(上限額)=23万円
累計573万円を超えているため3月支給分のうち23万円には、健康保険料はかかりません。

▼社会保険料がかかる賞与額:厚生年金保険
8月150万円、12月150万円、3月100万円となります。

計算式は以下の通りです。
①8月200万円-上限額150万円=50万円
②12月300万円ー上限額150万円=150万円
8月、12月は上限額150万円を超えているため、①50万円、②150万円には厚生年金保険料がかかりません。

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難易度と必要性
難易度
★☆☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

賞与額が多い、少ないにかかわらず賞与の届出は必要です。「今回は賞与額が少ないから」「従業員が嫌がるから」などの理由で社会保険料は控除せず、年金事務所への届出をしていない企業が見受けられます。社会保険料は法令等で定められているため、正しく給与から控除し、年金事務所へ届出を行わないと従業員の将来の年金に影響が出ます。また、年金事務所の調査で指摘され、遡って社会保険料を納付しないといけなくなるケースもあります。正しく手続きを行いましょう。

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