労災保険の業務災害の手続き(第三者行為なし)、流れとポイント

この記事でわかること
  • 業務災害の流れや手続きを知る
  • 申請書の入手、届出方法などの一連の流れ
  • パート・アルバイトも労災保険の対象になりますか?など

基礎知識

仕事中にケガや病気になることは、誰にでも起こり得るリスクです。起きてしまったことに対して、企業として正しい対応ができるようにしておきましょう。

言葉の定義

労災保険とは労働者災害補償保険の略称です。労災保険は仕事中や通勤中のケガなどについて、本人や遺族に必要な補償がされる制度です。労災保険には「業務災害」と「通勤災害」がありますが、ここでは業務災害(第三者行為なし)について記載しています。

なぜ必要?

業務災害が起きてケガなどをしたときは、治療費や休業の補償などが必要になります。本来は、企業が補償しなければなりません、ケガの状態や障害が残ったときなど補償が高額になるケースもあり、負担が大きく倒産する可能性もあります。そのため国は「労災保険」の制度を作り保険料を企業同士で負担し、業務災害が起きたときは直接従業員に治療費などを支給します。治療費の負担がなく、休業補償なども行われるため、従業員は安心して治療に専念できます。

リスク

業務災害が起きたときに、正しく手続きを行わず健康保険証を使ったり、労働基準署に届出をしなかったときは「労災かくし」と判断されことがあります。「労災かくし」は法律違反になり「50万円以下の罰金」や送検されることがあります。

対象企業

すべての企業

対象者

すべての従業員

実施期間

随時

やること

仕事中に事故が発生したと連絡を受ける

以下の状況を確認します。

①疾病状況の確認
②病院への搬送の必要性
③従業員への家族へ連絡の必要性
④事故が起きた状況
⑤警察や消防署への連絡の必要性

業務災害と認められるかを検討する

業務災害と認められるのは以下のときです。
①仕事中におこった事故(出張中やトイレ休憩中、移動中なども含まれます
②仕事が原因で起こった事故

【注意点】
業務災害と認められないのは以下のときです。
①私的な行動をしているとき
(企業外で昼食を摂る、勤務時間外に会社の残って雑談をしているなど)
②自然災害(地震や台風など)のとき
③故意に事故を起こしたとき
④私的な怨恨(喧嘩など)によるケガのとき

病院を確認する

従業員に以下を確認します。
従業員の意識がないときや治療中で連絡が取れないなどのときは、付き添っている従業員や家族の方に連絡を取り確認をします。

①仕事中の事故であることを病院に伝えて治療を受けているか
②治療を受けた病院が労災保険に対応している(労災指定病院)か、そうでないか

POINT

すべての病院が労災保険(労災指定病院)に対応しているわけではありません。
労災保険の書類を作成するときに、労災指定病院かそうでないかで書式が異なるので、必ず確認をします。

労災指定病院以外のときは、治療費は一旦全額負担(10割)を支払います(健康保険は使えません)。企業または従業員のどちらが負担しても差し支え有りません。高額になるケースのときは、企業が負担することが多いです。治療費を支払ったときの領収書は、労災保険の給付の請求に必要です。紛失しないよう、大切に保管しておいてください。

労災保険の書類を作成します。

治療費に関する労災保険の書類を作成し、届出などを行います。

・労災指定病院で治療を受けたとき
①「療養補償給付及び複数事業場労働者療養給付たる給付請求書(様式5号)」に必要事項を記載します。
②①作成した書類を治療を受けた病院に提出します。

・労災指定病院以外で治療を受けたとき
①「療養補償給付及び複数事業場労働者療養給付たる給付請求書(様式7号)」に必要事項を記載します。
②①の書類を病院に提出し、治療の内容などを記載してもらいます。
※病院によっては、記載してもらうのに約2~3週間かかることがあります。
③②の書類を病院から返却してもらいます。
④管轄の労働基準監督署に届出します。

添付資料:治療費を支払ったときの領収書(原本)
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参

POINT

労災指定病院以外で治療を受け、薬局などを利用したときは別に書類が必要になります。労災保険の届出の書類は用途によって細かく分れています。
不明なときは、管轄の労働基準監督署へお問い合わせください。

参考・ダウンロード
労働保険給付関係請求書等 |

ダウンロード

業務災害の報告書を作成する

業務災害が起きたときは「死傷病報告書」を作成し、労働基準監督署へ届出が必要です。「死傷病報告書」は、業務災害で従業員が休業した日数によって書類が異なります。

・休業した日数が4日以上または死亡したとき
業務災害が起きてから、遅滞なく届出が必要です。

添付資料:なし
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参

・休業した日数が4日未満
以下の期間に起きた業務災害について、まとめて報告します。
①1~3月分:4月30日までに報告
②4~6月分:7月31日までに報告
③7~9月分:10月31日までに報告
④10~12月分:1月31日までに報告

添付資料:なし
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参

休業補償の書類を作成する

ケガなどがひどく休業が必要なときは、休業4日目から労災保険から休業補償が支給されます。休業3日目までは、企業が平均賃金の60%以上の休業補償を支払わなければなりません。

①「業補償給付支給請求書 複数事業労働者休業給付支給請求書 業務災害用・複数業務要因災害用(様式第8号) 」に必要事項を記載します。
②①の書類を病院に提出し、治療の内容などを記載してもらいます。
病院によっては、記載してもらうのに約2~3週間かかることがあります。
③②の書類を病院から返却してもらいます。
④管轄の労働基準監督署に届出します。

添付資料:直近3か月の賃金台帳、出勤簿
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参

同じ業務災害がおきないよう検討する

業務災害が起きた原因を見直し、今後起きないよう対策をします。

よくある質問

Q:パート・アルバイトも労災保険の対象になりますか?

なります。
労災保険は、雇用形態にかかわらずすべての従業員が対象です。

Q:健康保険証を使って治療を受けました。労災保険に切り替えないといけませんか?

切り替えが必要です。
健康保険は、私傷病のときのみ使えます。したがって、業務災害や通勤災害には使用できません。誤って使ったときは、治療を受けた病院に連絡をしご相談ください。ステップ4に記載したような書類作成や届出が必要になりますが、添付書類などが別途必要になることがあります。病院で対応がわかりかねると回答されたときは、管轄の労働基準監督署へご相談ください。

Q:業務災害で従業員に障害が残り、慰謝料の請求をされています。慰謝料は労災保険から支給されますか?

支給されません。
労災保険には慰謝料に関する補償はありません。

Q:労災保険の休業補償を本人ではなく、企業に振り込みしてもらうことはできますか?

できます。
本人ではない別の人などに労災保険の休業補償を振り込むことを「受任者払い」といいます。労働基準監督署に「受任者払申出書」を届出しておくと企業に振り込まれます。ただし本人の承認が必要です。

 

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難易度と必要性
難易度
★☆☆
必要性
★★☆
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

労災保険は企業と従業員を守るためのものです。「労災保険を使うと労働基準監督署に目をつけられる」「調査にこられる」など誤った認識で、労災保険を使わない企業が見受けられます。労災保険を使わないということは「労災かくし」につながり、企業のリスクが高まります。また、書類がややこしいからと労働基準監督署への届出が遅くなったりしているケースもあります。書類に記載することは確かに多いですが、不明点などは労働基準監督署に問い合わせすると丁寧に教えてもらえますので、正しく制度を利用してください。

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