- 社会保険の扶養者追加の必要性と手続きの流れを知る
- 社会保険の扶養者の条件を知り、手続きを行う
- 配偶者を扶養に入れました。配偶者の国民年金はどうなりますか?など
基礎知識
社会保険と扶養に関する手続は漏れがちですが、正しく届出ができていないときのリスクは予想より大きいものです。
言葉の定義
社会保険の扶養者とは、一定の条件を満たしている家族や親族をいいます。条件は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している役員・従業員(被保険者)の収入で生活をしている、同居をしているなどです。ここでは、特定適用事業所以外で協会けんぽに加入している企業のケースを記載しています(海外に留学をしているため日本に扶養者の住所がないケースは除きます)。
なぜ必要?
扶養者は、被保険者に生活を支えてもらう必要があります。健康保険や年金など生活への保障も必要です。被保険者の扶養者になれば、健康保険料や年金の支払いがなくなり負担が軽減されます。
リスク
扶養者になるには条件があります。条件を満たしているかどうかの確認を怠って届出をし、扶養者になったとしても、後日さかのぼって扶養者から外されることがあります。
対象企業
社会保険に加入しているすべての企業
対象者
扶養者がいる役員・従業員
実施期間
随時
従業員・役員から扶養を申請を受ける
婚姻や子どもが生まれたなどで、配偶者や親族を扶養者にしたいと申請があったら以下のことを確認します。項目が多いので、事前に一覧にした書類の作成をおすすめします。
【確認すること】
①扶養者の氏名
②扶養者の氏名の読み方
③生年月日
④性別
⑤続柄
⑥マイナンバーまたは基礎年金番号
⑦同居または別居
⑧職業
⑨年収
⑧扶養者になる理由
⑨住所(別居のとき)
⑩扶養者が配偶者のときは電話番号(自宅または配偶者本人)
⑪扶養者になる日
※海外に留学などしていて日本に住んでいないときは「日本に住んでいない理由」も必要です。
扶養者に該当するかを確認する
扶養者に該当するかどうかの確認をします。扶養者にできるかどうかの条件は複数あります。
【扶養者にできる範囲】
扶養者のできる範囲は法令等で定まっています。
①~⑧以外は扶養者にはなれません。
①配偶者
②子ども
③孫
④父母
⑤祖父母などの直系尊属
⑥配偶者の父母
⑦①~⑤以外の3親等内の親族
⑧内縁関係の配偶者の父母および子ども)
(配偶者の死後、引き続き同居をするときを含む)
扶養者の範囲
参考:協会けんぽサイト
※⑥~⑧は、被保険者と「同居」をしていないと扶養者になれません。
【収入】
扶養者には以下の年収の条件があります。
①②を満たしている必要があります。
①年収が130万円未満(60歳以上または障害者のときは180万円未満)
②扶養者の年収が被保険者の1/2未満
(別居のときは扶養者の年収は被保険者からの仕送り額未満)
※扶養者の年収には、給与、失業保険、年金、家賃収入などが含まれます。
必要書類の案内をする
被保険者に必要に応じて、扶養者を年金事務所へ届出するときに必要な書類を案内します。
【続柄の確認】
①扶養者の90日以内に発行された戸籍謄(抄)本または住民票
(コピー不可、マインナンバーの記載がないもの)
※住民票は、被保険者が世帯主で扶養者と同居のときに限ります。
ただし被保険者、扶養者のマイナンバーが届出できるときは必要ありません。
【扶養者の年収などの確認】
①年金額がわかる書類(年金額の改定通知書など)
②課税(非課税)証明書
③給与明細書
④離職票など
ただし被保険者と扶養者が別居のときは、仕送り額がわかる書類(現金書留の控えや銀行の通帳のコピーなど)が別途必要です。
※被保険者と扶養者が同居していて、所得税法上の扶養親族(年収103万円以下)のときは、証明は必要ありません。
※扶養者が学生のときは証明は不要です。
続柄や年収の確認書類などは、状況に応じて変わります。
事前に管轄の年金事務所へお問い合わせされることをおすすめします。
扶養家族の書類を作成し、届出をします。
情報が集まったら届出に必要な「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届」を作成後、届出をします。
添付書類:状況に応じて必要(ステップ3参照)
届出期限:扶養者になってから5日以内
届出先:事務センターまたは管轄の年金事務所
届出方法:郵送または管轄の年金事務所へ持参(事務センターのときは郵送のみ)
健康保険証と通知書が企業へ届く
協会けんぽから「健康保険証」が1~2週間で企業へ届きます。
健康保険証は、従業員へ渡します。
よくある質問
Q:配偶者を扶養に入れました。配偶者の国民年金はどうなりますか?
加入します。
被保険者の扶養者になった配偶者は、健康保険料の支払いはありませんが国民年金に加入が必要です。ただし、20歳~60歳の期間に限ります。
Q:従業員が別居している両親を扶養に入れたいと申請してきました。仕送りは現金で手渡しのときは、どういった証明が必要ですか?
手渡しのときは、証明ができません。
仕送りの証明は、客観的に確認できる書類が必要で、手渡しでは客観的な証明ができません。したがって、手渡しのときは仕送りの方法を銀行や郵便局からの振込、または現金書留に変更し、証明ができるようになってから届出をされることをおすすめします。
Q:従業員に子どもが生まれました。マイナンバーがまだ届いていないときは、どういった証明が必要ですか?
90日以内に発行された戸籍謄本、戸籍抄本、住民票(従業員が世帯主で子ども同居しているとき)のいずれかの原本が必要です。
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
扶養者の条件を満たしているかどうかの状況確認は毎年行われます。日本年金機構から書類が郵送されるので、企業は回答をして届出を行います。扶養者の状況を正しく確認して届出を行わないと、状況確認のときなどにさかのぼって扶養者から外されることがあります。遡って扶養者から除外されると、健康保険証や年金の手続き、支払いが発生します。そういったことにならないよう扶養者の条件を確認し、不明点があれば、管轄の年金事務所へ事前に問い合わせをしましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。