1年単位の変形労働時間制とは?労務担当者が知っておくべき導入のメリットと運用の注意点

この記事で分かること
  • 1年単位の変形労働時間制について知る
  • 1年単位の変形労働時間制の導入する流れ
  • 1年単位の変形労働時間制を採用している会社で、休日の振替や代休が頻繁に行われるような場合、1年単位の変形労働時間制を否定される要因になりますか? など
難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆

基礎知識

変形労働時間制を適切に運用することにより、残業代の削減だけでなく、ワークライフバランスの向上も期待できます。1年単位の変形労働時間制の導入を検討している労務担当者は、まず制度のルールを正しく理解することが重要です。そのうえで自社に最適な運用を検討していくことが求められます。

言葉の定義

1年単位の変形労働時間制とは、対象期間の1週間あたりの平均労働時間を40時間以内に収めることで、業務の繁閑に応じた労働時間を配分することが認められる制度です。これにより、特定の日や週に法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた勤務を設定できるようになります。
制度を導入するためには、事前に労働基準監督署へ労使協定を届出しておかなければなりません。この記事では、1年間のカレンダーを作成し制度を導入するケースについて記載しています。

なぜ必要?

この制度は、季節によって業務の繁忙・閑散差が激しい業種や、特定の月だけ繁忙となる職種(決算期に業務が集中する経理部門など)で多く採用されています。1日の労働時間を調整することで、休日の日数が増加し、対象期間の労働時間を削減することができます。

リスク

労働基準監督署へ労使協定の届出を行わず1年単位の変形労働時間制を運用したときは、労働基準法違反となり、「30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

対象企業

1年単位の変形労働時間制は、労働基準法 第32条の4に基づく制度であり、業種や企業規模を問わずあらゆる企業で導入可能です。上述のとおり、季節によって繁閑の差が激しい業種などに適した制度といえます。

対象者

対象企業で勤務する従業員

実施期間

随時

メリット

1年間の週平均労働時間を40時間以内におさめることで、繁忙期には長く、閑散期には短く所定労働時間を設定でき、業務量の波に合わせた柔軟な運用が可能になります。これにより、企業にとっては残業代の削減につながることや、従業員にとってはワークライフバランスの向上といった、双方へのメリットが期待できます。

デメリット

労使協定の締結・届出、就業規則改定、年間勤務カレンダー作成など、導入時の事務負担が大きいことが懸念点として挙げられます。また、1年単位の変形労働時間制は、恒常的な時間外労働や休日出勤、勤務時間の変更を前提としている制度ではありません。そのため、カレンダーで決められた出勤日などの変更は原則できません。

 

やること

1年単位の変形労働時間制の留意点を理解する

この制度は、1週間あたりの平均労働時間を40時間以内に収めることで、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えて働かせることができる制度です。しかしこの制度には労働時間の限度などいくつかの制限があります。主に以下の留意点を把握したうえで、導入の検討をすすめることが大切です。
【労働時間の制限】
制度を導入すれば何時間でも勤務をさせてよいわけではありません。以下の制限をクリアするためにカレンダーを組む必要があります。
(1)1日の労働時間の限度: 10時間以内
(2)1週の労働時間の限度: 52時間以内
(3)連続勤務が可能な日数の限度: 原則6日まで(労使協定で定めた繁忙期である「特定期間」は、週1日の休日があれば可。この場合、実質的に最長12日連続勤務となるケースもあります)
(4)対象期間における労働日数の限度:1年あたり280日以内(対象期間が3か月を超える場合)
(5)対象期間の総労働時間: 365日の場合、2,085.71時間以内

【「事前の特定」と「変更不可」の原則】
この制度は「いつ、何時間働くか」を事前に確定させなければならず、後からの変更はできません。そのため「急に忙しくなったから、明日の休日を労働日に振り替える」という運用は、原則として認められません。また、頻繁な変更(休日の振替等)を行うと、制度そのものが「無効」とみなされるリスクがある点にも留意が必要です。
こうした留意点を理解したうえで、自社での制度導入を検討することが大切です。

1年単位の変形労働時間制を導入するか検討する

変形労働時間制を導入するときは、まず自社の労働時間の実績を振り返り、どの時期に繁閑が生じているのかを把握することが重要です。そのうえで、就業規則や労使協定の整備、シフト作成の方法、勤怠管理・給与システムが制度に対応できるかなどを確認します。

【1年単位の変形労働時間制の導入を検討する理由例】
①1年間で繁忙期・閑散期があり、繁忙期の残業代を抑えたい
②閑散期に長めの休暇や短い勤務時間を設定し、従業員のワークライフバランスを高めたい など

1年単位の変形労働時間制のルールを決め、労使協定などを作成する

1年単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定に以下の①~⑤を定め、事業所を管轄する労働基準監督署へ届出を行う必要があります。

【決めること】
①対象労働者の範囲
②対象期間および起算日
③特定期間
④労働日および労働日ごとの労働時間
⑤労使協定の有効期間

年間カレンダーの作成も行います。
また、「始業・終業時刻」「休憩時間」「休日」は就業規則に必ず明記しなければならないため、制度導入のために労使協定を締結し届け出ることに加えて、就業規則を整備して届出することも求められます(従業員数10人未満の企業を除く)。

従業員に制度の説明をする

従業員に1年単位の変形労働時間制の説明をします。このとき、「なぜこの制度を導入するのか」「働き方がどう変わるのか」を納得感を持って伝えることが、運用をスムーズにする鍵となります。

労働基準監督署へ届出をする

就業規則と労使協定、年間カレンダーは、管轄の労働基準監督署へ届出するため2部ずつ用意します。労働基準監督署へ届け出て受領印を受けた後、1部は企業控えとして返還され、1部は労働基準監督署で保管されます。
また、届出した就業規則と労使協定、年間カレンダーは従業員に周知が必要です。

添付書類:なし
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参、電子申請

運用をスタートする

制度は運用をスタートしてからが本番です。日々の勤務がカレンダーどおりかチェックするだけでなく、定期的に労働時間を振り返る習慣をつけることをおすすめします。






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よくある質問

Q:1年単位の変形労働時間制を採用している会社で、休日の振替や代休が頻繁に行われるような場合、1年単位の変形労働時間制を否定される要因になりますか?

1年単位の変形労働時間制における休日の振替が頻繁に行われる場合、変形労働時間制の適用が否定される(無効と判断される)要因になる可能性があります。
1年単位の変形労働時間制は、就業規則や労使協定で、あらかじめ対象期間における各労働日・各休日のスケジュールを具体的に「特定」することが要件となっているためです。
そのため、当初定めたスケジュール(労働日や休日)が事後に頻繁に変更(振替)される場合、そもそも労働日や休日が「特定」されていなかったとみなされ、制度の運用が無効と判断されるリスクがあります。

また、休日労働を行った後にその代償として「代休」を付与すること自体は、変形労働時間制の運用を直ちに否定するものではありません。ただし、その場合、休日労働に対する割増賃金(法定休日の場合は35%以上)の支払い義務は残ります。

Q:1年単位の変形労働時間制を導入していますが、労働基準監督署への「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」の届出を忘れていました。この協定はいつから有効になりますか?

「1年単位の変形労働時間制に関する協定届(労使協定)」は、労働基準監督署に届け出ることで効力が生じます。
届出を忘れていた場合、1年単位の変形労働時間制は無効と判断され、その期間は原則の法定労働時間(1日8時間、週40時間)が適用されます。したがって、法定労働時間を超えて労働させた時間については、割増賃金を支払わなければなりません。

HRbaseからのアドバイス

1年単位の変形労働時間制を利用する際、労働基準監督署へ届出は1回かぎりではありません。継続して制度を利用する場合、労使協定の期間が切れる前に再度届出が必要になるため注意しましょう。
労使協定の期間が切れているにもかかわらず、届出を行っていない企業が散見されます。企業の慣例として運用していたとしても、労働基準監督署へ届け出ていなければ、制度の適用は法令上認められません。その場合、労働時間は法定労働時間の原則(1日8時間以内、週40時間以内)に従うことになります。制度の内容を正しく理解し、適切な運用を心がける必要があります。

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