介護休業、どうやって取らせる? 従業員に提出してもらう書類と手続きの流れ

この記事でわかること
  • 介護休業の必要性と、運用しなかったときのリスク、対象者などを知る
  • 従業員に提出を求める書類、ハローワークでの手続き方法など
  • 介護給付金の金額、複数人でも受給できるかなど
難易度と必要性
難易度
★★☆

 

必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

介護休業は、単に介護をする期間だけではなく、介護を外部に依頼したり、仕事を続けながら介護をするための仕組み作り期間でもあります。 介護はいつまで続くか見えにくいものです。さまざまなケースを想定し、従業員と相談の上、手続きを行ってください。介護休業給付金の申請期限はわかりにくいため、不明点は管轄のハローワークに問い合わせてください。また、休業給付金は一定期間雇用保険に加入している従業員のみ受け取れます。介護休業を取得できる人と、介護休業給付金がもらえる人は同じではないことを、労務担当者は理解しておきましょう。

基礎知識

介護休業に対する正しい理解を深め、制度を導入したうえで、取得を希望する従業員に対してスムーズな手続きや説明ができるようにします。

言葉の定義

介護休業とは、育児・介護休業法で定められており、家族が病気やケガけがなどで介護が必要になったときに、仕事を休んで介護に専念できる制度です。要介護状態・精神に関する障害を持つ家族が、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある場合に、取得の対象となります。介護に専念するための期間のほか、介護施設の見学や入所準備などでも取得できるため介護の状況によってさまざまなシーンで活用できます。

なぜ必要?

高齢化の進展に伴い、働きながら家族の介護を行う必要がある従業員が増加しています。企業として、介護休業への理解や取得ルールの作成などを行うことにより、従業員の離職防止や働きやすい職場づくりにつながります。

リスク

従業員が必要に応じて介護休業を取得できなければ、仕事を続けられなくなるケースも出てきます。その結果、退職という選択が増えれば、企業側は貴重な人材を失うことになります。

対象企業

すべての企業

対象者

要介護状態にある対象家族を介護する従業員

【育児・介護休業法により、介護休業の対象外となる従業員
・日雇い労働者
・有期契約労働者(契約社員、パート・アルバイトなど)
介護休業取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までのあいだに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了し、更新されないことが明らかな場合

【労使協定により対象外にできる従業員】
・入社1年未満の従業員
・介護休業の申出の日から93日以内に雇用期間が終了する従業員
・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

対象家族の範囲

・配偶者(事実婚など内縁関係を含む)
・父母(養父母を含む)
・配偶者の父母(養父母を含む)
・祖父母
・兄弟姉妹

利用期間・回数

対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割取得できます。

メリット

介護休業制度を適切に運用することで、従業員の仕事と介護の両立を支援し、優秀な人材の確保や定着につながります。また、「この企業ならば安心して働ける」と考える従業員が増えることで対外的なアピールポイントとなり、優秀な人材が集まりやすくなります。

デメリット

介護休業制度は育児・介護休業法で定められる制度のため、不適切な運用や取得の拒否は指導や罰則の対象となる可能性があります。また、従業員の信頼低下や離職リスクにもつながります。

 

やること

従業員に申請書を提出してもらう

介護休業を取得する意向のある従業員がいる場合、介護休業申出書を原則、介護休業取得予定日の2週間前までに提出してもらいます。申出は書面が原則ですが、会社が認める場合はFAXや電子メールなども可能です。申出日が開始希望日の直前であっても、これを理由に申出を拒むことはできません。
介護休業の開始予定日が、申出をした日の翌日から2週間未満であるときは、介護休業開始予定日から2週間を経過する日のあいだで企業が開始日を指定できます。

【例】
2月1日:従業員から育児・介護休業申請書の提出を受けた日(申出日)
2月10日:従業員が希望する介護休業取得開始予定日
2月15日:申出があった日の翌日から2週間が経過した日
このとき、企業が指定できる休業開始日は、2月10日~15日のあいだです。

 

POINT

企業は、従業員に要介護状態の家族がいる証明となる書類(診断書など)を求めることができます。

介護休業期間・制度について通知する

「介護休業取扱通知書」で、介護休業の開始予定日や終了予定日を従業員に通知します。

介護休業中は、社会保険料は免除されません。そのため、介護休業中の従業員が負担する社会保険料・住民税の支払いの方法を伝えます。賃金についても、企業の規定に沿って伝えます。
書面による通知が原則ですが、従業員の希望があればFAXや電子メールなどでも可能です。

注意点

介護休業の繰り下げ(予定より遅く)は、1回限りできます。ただし、介護休業終了予定日の2週間前までに「育児・介護休業期間変更申請書(育児・介護休業期間変更申出書)」を企業に提出する必要があります。

関係者への休業の公表および休業中の引き継ぎを行う

関係者への休業の公表について本人の意向を事前に確認します。公表する場合は、従業員のプライバシーを考慮したうえで適切なタイミングで行います。介護休業を取得するにあたって、所属部署のメンバーや関係部署など必要に応じて業務の引き継ぎ担当を決めて、引き継ぎを行います。

介護休業を取得する

従業員が介護休業を取得します。

注意点

・介護休業期間の限度は、93日です。
・複数回の介護休業取得は、上限は3回、通算93日になるまでの期間であれば可能です。

復職前面談を行い、従業員が復職する

従業員から、復職日を書面で提出してもらい、復職前面談を行います。面談で行うことは、以下のとおりです。
・復職日の確定
・スムーズに業務に戻れるよう業務内容の確認
復職時は、業務の引き継ぎや休業中の変更内容などを伝え、業務が滞らないよう配慮しましょう。

介護休業給付金の申請を行う

給付金の申請は、企業が管轄のハローワークへ行います。
企業は管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業給付金支給申請書」を届出します。

添付書類:対象従業員の賃金台帳やタイムカード、従業員が提出した申出書、介護対象家族の氏名などが確認できる書類、振込先通帳のコピーなど
届出先:管轄のハローワーク
届出方法:郵送または持参、電子申請

※届出期限は、介護終了日の翌日から数えて2か月を経過する日が含まれる月の末日まで(介護休業期間が3か月以上になるときは、介護休業開始日から3か月を経過した日の翌日から数えて2か月目の末日まで)です。

控えを保管する

手続きが完了し、支給が決定すると、ハローワークから以下の書類が交付されます。
・「休業開始時賃金月額証明書」介護休業開始時賃金月額証明書(事業主控)
・「介護休業給付金支給申請書」介護休業給付金支給決定通知書(被保険者通知用)
従業員に「介護休業給付金支給決定通知書(被保険者通知用)」を速やかに渡します。
事業主控えは、紛失しないよう企業内で保管してください。






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よくある質問

Q:介護休業給付金はいくらもらえるのですか?

おおよそ賃金の67%の金額です。
「休業開始時の賃金日額×支給該当日数×67%」でハローワークが計算します。計算された金額が支給単位期間ごとに支払われます。

Q:常時介護を必要とする家族を、2人体制で介護します。2人とも介護休業を取得したら、介護休業給付金をもらえますか?

もらえます。
介護をする2人が、それぞれ介護休業・介護休業給付金の要件を満たしていれば介護休業の同時取得ができ、ともに介護休業給付金を受け取れます。

Q:介護休業給付金の申請から入金までの期間は、どの程度でしょうか。

約1週間です。
介護休業給付金の申請書を提出した後に、「支給決定通知書」がハローワークから送付されます。多くの場合は、決定通知書内の「決定支給日」から1週間程度で、給付金が口座に振り込まれるという流れになっています。

Q:要介護状態である証明の提出は必要ですか?

介護休業給付金の手続きには、原則不要です。
ただし、「介護休業の取得時には、家族が要介護状態である証明の提出が必要」という企業内ルールがあれば、それに従います。

 

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