- 介護休暇の対象者や取得可能日数など
- 就業規則で決めるべき項目と管理票、運用の流れなど
- 介護休暇の1年間とは1月1日〜12月31日ですか?など
基礎知識
介護休暇の内容を正しく理解し、就業規則などで決めて従業員へ周知します。
言葉の定義
介護休暇とは、要介護状態にある家族がいる従業員が、家族の介護や世話を行うために取得できる休暇です。介護休業とは異なります。
1年間で取得できる介護休暇の日数は、家族が1人のときは5日、2人以上のときは10日です。休暇の取得は1日もしくは時間単位で可能です。企業ごとに就業規則で決めたときは、半日での介護休暇も取得できます。
なぜ必要?
介護休暇は育児・介護休業法で定められています。対象となる従業員が必要な時に休暇を取得できれば、介護と仕事の両立を支援することができます。
リスク
従業員が介護休暇を申請したにもかかわらず、企業が取得させなかったときは法律違反になります。
対象企業
従業員を雇用するすべての企業
対象者
要介護状態にある対象家族がいる従業員
(日々雇用される従業員は対象外)
実施期間
随時
メリット
介護サービスの手続きや通院の付き添いなどで介護休暇を取得できれば、介護と仕事の両立ができ、貴重な人材の離職を防ぐことができます。
やること
就業規則にルールを決めて、従業員に周知する
就業規則などで介護休暇についてのルールを決め、従業員に周知します。
【決めること】
・対象外となる従業員
・賃金の支払いの有無
・1年間の期間(4月1日から翌年3月31日までなど)
従業員が介護休暇を取得したとき、賃金を支払うかどうかについては、企業が決めます。賃金を支払わないケースが多いです。
労使協定で、対象外にする従業員を決めることができます。ただし対象外にできる従業員の条件は、育児・介護休業法で決まっています。
労使協定で対象外にできる従業員
・1週間あたりの所定労働日数が2日以下の従業員
・入社6か月未満の従業員
対象者を確認する
対象者は、要介護状態の家族がいる従業員です。介護が必要な家族がいるかなど状況を確認し、対象の従業員が何日間、介護休暇を取得できるかを確認します。
対象家族の要介護状態の判断は、下記のどちらかの状態で行います。
・介護保険制度の要介護2以上
・厚生労働省の判断基準にあてはまる状態
管理表を作成する
介護休暇の残日数や取得した日、時間などを記載し、管理できるようにします。書式は任意です。
従業員から申請を受ける
介護休暇が必要になった従業員から、申請を受けます。
取得日を明確にするため、書面で提出してもらうことをおすすめします。申請書の書式は任意です。
突然の病院受診などの可能性もあるため、当日に申請するときの連絡方法も決めておきましょう。(例:電話で直属の上司に始業前までに連絡し、後日、介護休暇申請書を提出するなど)
定期的な病院付き添いなど事前に日程が決まっているものについては、「2週間前までに」など申請期限を決めておくことをおすすめします。介護が必要な理由を証明する書類を提出を求める企業もあります。
管理表に記入する
管理表に介護休暇の取得日を記載し、いつ、誰が取得したかわかるようにしておきましょう。企業と従業員の双方が、残日数などを正しく把握している状態がベストです。
よくある質問
Q:対象家族1人あたり5日の介護休暇が取得できるということは、対象家族が3人なら「3人×5日=15日」ということですか?
違います。
対象家族が1人で5日、2人以上で10日です。つまり対象家族が3人のときに取得できる介護休暇は10日になります。
Q:1年間とは「1月1日〜12月31日」ですか?
違います。
1年間の範囲は企業が決めます。1年間の決め方で多いのは4月1日~翌年3月31日です。その他、1月1日~12月31日や、決算月に合わせるなど、企業によって管理しやすい期間で決めています。
Q:対象家族が2人いるときは介護休暇が10日取得できますが、それぞれの対象家族ごとに5日ずつでしょうか。?
違います。
対象家族1人で10日取得することもできます。
Q:対象家族の介護や世話には、家事や買い物も含まれますか。
含まれます。
Q:4月1日~翌年3月31日までを1年間としています。4月1日の時点で要介護状態の家族が1人いる従業員がいました。その年の7月1日、同従業員の要介護状態の家族が2名になったときの日数は、当初の5日のままで問題ありませんか?これまでの介護休暇の取得の申請は0日です。
問題あります。対象家族が2人になった時点で、介護休暇を取得できる日数は10日になります。7月1日までに介護休暇を3日使用していたときは、以下にように計算します。
【1年間の定義】4月1日~翌年3月31日
・4月1日時点で対象家族が1人→介護休暇は5日
・4月1日~6月30日までの介護休暇を3日使用
・7月1日に対象家族が2人になる→介護休暇の残日数は7日になる
上記のように対象家族が2人になれば、介護休暇は10日取得可能になります。この例ではすでに3日介護休暇を取得しているので、10日ー3日=7日という計算になります。
Q:パート、アルバイトにも介護休暇を取得させなければいけませんか?
取得させなければなりません。
雇用形態に関係なく(日々雇用される従業員は対象外)、従業員から申請があれば介護休暇を取得させる必要があります。
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
介護のための休暇または休業を取得する従業員は、40歳以上の、企業の中心となって重要な役割を担っている立場の方が多いでしょう。そのため、周りの迷惑にならないよう退職を選択するケースも多くみられます。しかし介護は誰にでも起こりえることです。従業員の長期的なキャリアを描くためにも、ワークライフバランスを取れる環境整備を今から行う必要があります。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。