定年後の嘱託社員、労働条件の決め方は?

この記事でわかること
  • 定年後の嘱託社員の手続きの流れを知る
  • 嘱託社員の労働条件などを決める
  • 個別に労働条件を決められますか?など

基礎知識

人生100年時代といわれるようになりました。今まで以上に定年後の社員のスキルを生かすことが求められます。

言葉の定義

定年を迎えたあとに、企業と新たに雇用契約を結んた従業員を「嘱託社員」と呼びます。1年更新の契約社員として働くことが多く、正社員ではありません。

嘱託社員の労働時間や出勤日などの労働条件は、従業員の健康状態や任せる業務によって決める企業が多いです。この記事では、定年後すぐに嘱託社員として雇用するケースを記載しています。

なぜ必要?

嘱託社員は、企業の業務に長年携わってきた経験豊富な従業員です。他の従業員にはない高い技術や豊かな知識で、引き続き企業活動に貢献してもらえます。また、指導者として他の従業員の育成を任せることができます。

リスク

嘱託社員は一度企業を退職した従業員です。健康状態や体力などは、現役の正社員のときと比べて低くなります。また身体的な衰えなどから、仕事への意欲を保つのが困難になるケースがあります。

対象企業

嘱託社員を雇用する企業

対象者

定年を迎える従業員

実施期間

随時

メリット

嘱託社員の豊富な経験を活かした生産性の向上や、後進の育成ができます。

デメリット

嘱託社員は、現役の正社員と比べて健康や体力面で不安を抱えるケースが多く、急に辞職されるリスクもあります。

ルール

企業は、従業員を65歳まで雇用しなければならないと法律で定められています。
定年の最低基準は60歳ですが、60歳以降も働きたいと希望するすべての従業員を、嘱託社員として65歳まで雇用しなければなりません。

 

やること

嘱託社員の労働条件を検討する

定年後、嘱託社員として勤務してもらうためのルールを決めます。

【決めること】
①労働時間
②休日
③賃金(諸手当、賞与、昇給など含む)
④契約期間の有無(有期契約のときは、契約期間を決める)
⑤休職期間の有無
⑥退職の手続き
⑦嘱託社員になれる条件 など

65歳以降に従業員を嘱託社員で雇用するときは、上記の条件を自由に決めることができます。

POINT

定年後、従業員が嘱託社員として雇用を希望するときのために、申請期限(定年の1か月前など)や申請方法(書面提出なのか、面談時に口頭で行うのかなど)なども決めておくとよいです。

注意事項

有給休暇の付与にかかわる勤続年数や、消化していない有給休暇の残日数は、嘱託社員として雇用されたあとも権利が継続します。

就業規則にルールを記載する

内容を決めたら就業規則への記載が必要です。(従業員数10名以上であれば、就業規則を労働基準監督署へ届出します)

従業員からの申請を受ける

嘱託社員での勤務を希望する従業員は、企業のルールに従って定年前に申請をします。

POINT

定年前の従業員と、定年後の働き方について面談で話し合っておくことをおすすめします。面談では、定年退職をするのか、嘱託社員として働き続けるのかなど、本人の希望する働き方を確認します。

定年前に嘱託社員の雇用契約を結ぶ

嘱託社員を希望している従業員が定年を迎えたら、企業は嘱託社員の労働条件について説明を行います。労働条件の説明後に、嘱託社員の雇用契約を結びます。

注意事項

定年前と定年後で労働条件が変更になるときは、後日トラブルにならないようしっかりと説明を行いましょう。

嘱託社員として勤務を開始する

定年後、嘱託社員として雇用契約を結んだ従業員が、勤務を開始します。

社会保険の手続きを行う

嘱託社員の賃金が、定年前の金額と変更になるときは、社会保険料や雇用保険の手続きが必要になるケースがあります。

【社会保険料の変更】
定年前の賃金と嘱託社員の賃金を比べて、社会保険料の標準報酬月額が1等級以上さがったときは、社会保険料の変更手続きを行います。ただし定年後から嘱託社員として雇用されるまでのあいだに、1日も空白期間がないときに限ります。

社会保険料の変更手続きに必要な書類は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」です。

添付書類:事業主の証明(任意書式) ※定年退職したことがわかる書類および嘱託社員になったことがわかる書類のコピーでも差し支えありません。
届出先:最寄りの年金事務所または事務センター
届出方法:郵送または持参 ※事務センターは郵送のみ受付

よくある質問

Q:60歳で定年退職し、その後は嘱託社員として働くことになりました。定年前と比べて給与が下がったのですが、代わりに支給されるものはありますか?

あります。
賃金が、定年前と比べて75%未満に下がったときは、ハローワークから高年齢雇用継続給付を受けられます。支給額は、賃金の低下率によって異なり、65歳まで従業員本人に支給されます。

高年齢雇用継続給付を受けるには、雇用保険に5年以上の加入期間が必要です。
概要は、高年齢雇用継続給付制度のリーフレットを参照してください。

参考 | 厚生労働省リーフレット
【高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて】 |

ダウンロード

Q:定年(60歳)になる従業員が嘱託社員での雇用を希望しています。断ることはできますか?

原則できません。
65歳に満たない従業員が定年後の雇用を希望するときは、企業は雇用しなければならないと法律で定められています。ただし、就業規則の退職事由または解雇事由に該当しているときは雇用をしなくても差し支えありません。そのときは、従業員に継続雇用しない理由の説明を行うことをおすすめします。

Q:個別に労働条件を決められますか?

決められます。
労働時間や休日・賃金などの労働条件は、就業規則または雇用契約書で決められます。就業規則に「本人の希望や能力、会社の状況に応じて決める」などの記載をしておけば、個別に条件を決めることができるようになります。

Q:嘱託社員は、正社員と同じ賃金を支払わないとなりませんか?

支払わなくても差し支えありません。
嘱託社員は一度退職し、新たに企業と雇用契約を結びます。そのとき賃金などの労働条件を変更できます。スキルや業務内容にもよりますが、正社員のときと比べておおよそ6割程度の賃金を設定するケースが多いです。

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難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

嘱託社員は、経験や知識が豊富で企業にとって戦力になる人材です。ただし、加齢による健康面の心配があり、体調が不安定であれば仕事を任せることが難しいときもあります。
世間では「人生100年時代」という考え方が浸透してきました。従業員に長く働いてもらい、企業と従業員がよい関係を続けていくためにも、従業員に健康管理をうながしていくことも大切でしょう。

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