定年の年齢を決めるルールは? 3つのパターンと再雇用の注意点

この記事でわかること
  • 定年年齢には下限があり、上限はないことを知る
  • 定年年齢について検討し、ルールを決める
  • 定年後は継続雇用をしなければいけないか、など

基礎知識

定年制度を正しくルール化し、就業規則に定めます。従業員が、最後まで安心安全に働ける環境をととのえます。

言葉の定義

定年とは、一定の年齢になったときに雇用契約が自然と終了する制度です。下限年齢は決まっていますが、上限年齢は決まっていません。

なぜ必要?

定年年齢については、「高年齢者雇用安定法」で定められています。

定年制度は就業規則に記載が必要です。10名未満で就業規則の作成義務がない企業は、法律を下回らない運用がされていれば大丈夫です。しかし文章で提示されていなければトラブルになる可能性もあるため、10名未満であってもルール化しておくことをおすすめします。

ルール

定年は、60歳を下回ることはできず、かつ65歳までは雇用を継続できる制度でないといけません。
(例:定年年齢60歳 定年後再雇用65歳 など)

具体的には、定年の定め方については3つの方法があります。
①65歳以上で定年を定める ②65歳まで継続雇用制度をつくる ③定年制を廃止する

①は、定年年齢を65歳以上に引き上げて、長く従業員に働いてもらうようにする制度です。

労働時間、賃金、待遇などを見直さず、そのまま定年年齢まで働けるため、従業員の安心にもつながります。企業としても優秀な人材の長期的な確保が可能になります。

②は、定年後、継続雇用の制度を導入し、65歳以上まで働いてもらえる制度です。

8割程度の企業で、この制度を活用しています。継続雇用は「再雇用」もしくは「勤務延長」のどちらかとなり、再雇用のときは1年毎に労働条件(勤務時間、賃金など)を見直すと決めている企業が多いです。

POINT

60歳という下限を守っているなら、62歳などに設定することも可能です。ただし65歳まで継続雇用できる設定でないといけません。(例:定年62歳、再雇用65歳)継続雇用に年齢上限はありません。

また「最低定年60歳、再雇用65歳」の条件を守っていれば、企業が自由に決められます。たとえば「定年60歳、再雇用70歳」や「定年60歳、再雇用の年齢上限なし」などとすることができます。

継続雇用を希望する従業員は、いつまでに継続雇用の届出を行うかなども、就業規則に記載しておきます。(例:継続雇用を希望する従業員は定年になる1か月前までに上司に届出を行う など)

③は定年を廃止し、従業員が自ら退職するまで雇用し続ける制度です。

従業員が働ける間は、70歳、80歳になっても働いてもらえます。定年を決めておかないと、従業員が何歳(100歳など)になっても雇用し続けないといけなくなります。

対象企業

定年を定めるすべての企業

対象者

すべての従業員

メリット

定年を定めていると、雇用契約を円滑に終了できます。また、定年後にその従業員を再雇用するときに労働条件の見直しができます。

 

やること

定年のルールを決める

定年と、再雇用をする年齢を決めます。定年年齢は60歳、再雇用は65歳を下回ってはいけません。
定年のルールは、基礎知識で解説した通り、3パターンに分かれます。

【現状、定年制度がある企業、見直しをする企業】
①定年年齢が65歳未満で決められている企業は、定年年齢を65歳以上に引き上げる
②希望する人が65歳以上になっても引き続き働けるように、継続雇用制度を取り入れる
③定年制度を廃止する

【定年制度を新たに決める企業】
①定年年齢を65歳以上として、ルールを決める
②希望する人が65歳以上になっても引き続き働けるように、継続雇用制度を取り入れる
③定年制度を導入しない

就業規則に記載する

定年制度の内容を決めたら、就業規則への記載を行います。(従業員数10名以上の企業であれば、改めて労働基準監督署へ届出します)

従業員に周知する

定年制度を決めたら、全従業員に伝わるよう、メールや掲示などの方法で周知します。制度利用時の不明点は誰に聞けばよいか、いつから実施するかも一緒に伝えましょう。

継続雇用制度の導入時は、手続きを行う

ステップ1の②で、継続雇用制度を導入したときは、労働局に「継続雇用の高齢者に関する申請書(第二種計画認定・変更申請書)」を提出します。

POINT

再雇用制度を導入し、有期計画で再雇用して5年を超えたとき、無期雇用になる可能性があります(有期契約労働者は5年を超えたときは無期雇用の申出ができ企業は拒否できません)。ただし「継続雇用の高齢者に関する申請書(第二種計画認定・変更申請書)」を労働局の雇用環境・均等室へ届出をしておけば、定年後に再雇用した従業員を無期雇用への転換の対象外にすることが可能です。

参考|厚生労働省パンフレット

よくある質問

Q:定年後に、継続雇用をする条件を付けることはできますか?

65歳までは、原則再雇用する条件は付けられません。従業員が希望すれば再雇用をしないといけません。ただし、就業規則の解雇事由または退職事由と同じ内容を、継続雇用しない事由として規定はできます。

注意点

継続雇用を断る目的で、解雇事由または退職事由に追加することは認められていません。(例:定年後、継続雇用を希望する従業員が、企業の提示する労働条件に同意できないとき など)

Q:定年後に継続雇用するとき、嘱託社員や契約社員、パートなどに雇用形態を変更できますか?

できます。ただし、65歳より前に雇用契約が終了するような雇用契約は違法となります。(例:契約社員の定年は63歳とし継続雇用はしないとこととする など)

Q:定年になる従業員はいないのですが、定年年齢は決めておかないといけないでしょうか?

決めておく必要があります。定年については「高年齢者雇用安定法」で決められています。また、就業規則には退職に関する内容(解雇、定年など)を記載するよう、定められています。

 

難易度と必要性
難易度
★☆☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

「継続雇用の高齢者に関する申請書(第二種計画認定・変更申請書)」の届出をしていない企業がまだまだ多いです。提出をしていないと、定年を迎えたあとに無期雇用になる可能性があり、無期雇用になると従業員が自主的に辞めない限り、企業から退職を勧奨すれば「解雇」になってしまいます。また、継続雇用の年齢を上回っても勤務してもらっているケースも多くあります。人手不足、技術不足など理由はさまざまですが、一定のルールを決めて形骸化しないような運用を心がけてください。

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