- 最低賃金制度の基本と種類、適用対象
- 最低賃金の計算に含まれる賃金と除外される手当
- 最低賃金を下回る場合の罰則とリスク、企業が取るべき対応 など
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
基礎知識
毎年見直される最低賃金の改定は、業種業態・企業規模を問わず、すべての企業に関係する重要なものです。
言葉の定義
最低賃金制度とは、国が法令に基づき賃金の最低額を定め、企業にその額以上の賃金の支払いを義務付ける制度です。企業は、正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に対して最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。
なぜ必要?
従業員が安心して働けるための基準であると同時に、最低賃金が決まっていることで、企業の競争の公正性を保つためです。
リスク
最低賃金を下回る賃金を支給していた場合、50万円以下の罰金が科されます。また助成金の申請ができなくなったり、申請しても不支給となる可能性があります。
最低賃金を下回る賃金を支給していた場合、罰金が科されるリスクに加え、従業員から、実際の賃金と最低賃金の差額をさかのぼって請求されるケースもあります。トラブル回避のためにも正しい賃金の支給が必要です。
対象企業
すべての企業
対象者
パート・アルバイト含むすべての従業員
やること
最低賃金改定後の額を確認する
地域別最低賃金は10月頃、特定最低賃金は12月頃に変更が行われます。
地域別最低賃金については、9月中旬頃には変更後の最低賃金の額が分かります。
各都道府県の最低賃金は、厚生労働省のサイトで確認できます。
参考|厚生労働省『地域別最低賃金の全国一覧』
従業員の賃金が最低賃金を下回っていないか確認する
最低賃金の計算に含まれる賃金は、毎月従業員に固定給として支払われる基本給や各種手当から計算します。
ただし、以下の手当は最低賃金から除外されます。
①慶弔手当など、臨時的に支払われるもの
②ボーナス・賞与
③残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当
④精皆勤手当
⑤通勤手当
⑥家族手当
④~⑥は、手当の名称に関わらず実質によって取扱います。以下の例のように従業員にその手当の目的に沿わず支給している場合は最低賃金の計算に含めます。
【最低賃金の計算に含むときの事例】
・遅刻・早退・欠勤などがあっても精皆勤手当を支給している
・通勤距離や通勤に要した費用にかかわらず通勤手当を支給している
・扶養家族の有無にかかわらず家族手当を支給している など
最低賃金を下回っている従業員の賃金の見直し
最低賃金を下回る場合は、最低賃金以上になるよう基本給や諸手当の支給額などの見直しが必要です。
よくある質問
Q:最低賃金を下回っているかどうかは、どのように計算すればよいでしょうか?
以下の計算方法で計算し、最低賃金と比較してください。
時給制のとき:時給額
日給制のとき:日給額÷1日の所定労働時間
月給制のとき:月給額÷1か月の平均所定労働時間
歩合給のとき:歩合給÷当該賃金算定期間における総労働時間
最低賃金に含まれる諸手当(役職手当、資格手当など)の支給があるときは、諸手当を含めて計算してください。
【例】
①基本給18万円 ②資格手当2万円 ③1か月の所定労働時間が160時間のとき、
平均賃金は(①18万円+②2万円)÷③160時間=1,250円
Q:最低賃金を減額する方法はありませんか?
最低賃金は、原則として雇用形態(正社員やパート・アルバイトなど)に関係なく、企業で働くすべての従業員に適用されます。ただし、以下に該当し、かつ一定の要件を満たした場合は、都道府県労働局長の許可を受けることで、個別に最低賃金の減額の特例が認められます。
【最低賃金の減額対象になる従業員】
①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
②試用期間中の者
③職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定の者
④軽易な業務に従事する者
⑤断続的労働に従事する者
最低賃金の減額の特例が適用されるためには、対象となる①~⑤の従業員ごとに、細かな要件を満たす必要があります。事前に管轄の労働基準監督署に相談することをおすすめします。
Q:最低賃金を満たしているかを計算する際、時間単価を計算において1円未満の端数がでました。1円未満を四捨五入することはできますか?
最低賃金の計算に沿って時間単価を計算したときの1円未満の端数は、四捨五入することはできません。
四捨五入せずに最低賃金と比較し、同額または上回るよう賃金を支給してください。
Q:雇用契約書で最低賃金を下回る契約を結んでいます。従業員も納得しているので、この条件での賃金の支払いを続けたいのですが、可能ですか?
雇用契約書の内容が最低賃金を下回っている場合、その部分は無効となり、法律で定められた最低賃金が適用されます。これは、法律上の義務であるため、企業の判断で下回ることはできません。
HRbaseからのアドバイス
毎年、労働基準関係法令違反での送検や、企業名の公表が行われています。公表されている中には「賃金が最低賃金額に満たず、行政指導に応じない」などのケースもあります。企業は、正社員、パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。これを下回る賃金を支払った場合は、50万円以下の罰金が科されます。毎年の最低賃金引き上げに適切に対応できるよう、注意が必要です。
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社会保険労務士。株式会社HRbase代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。





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