介護短時間勤務制度とは? 申請と運用のすべて

この記事でわかること
  • 介護短時間勤務制度の必要性と対象者
  • 介護短時間勤務の申請フロー
  • 介護短時間勤務を取得すると社会保険は喪失しますか?など

基礎知識

介護と仕事との両立を助け、介護離職を防ぐためには、介護短時間勤務制度に対する企業側の理解と運用が必要です。

言葉の定義

介護短時間勤務制度とは、2週間以上要介護状態の家族を介護するために、勤務時間を短縮できる制度です。「育児・介護休業法」で定められています。介護される対象家族1人あたり、連続する3年以上の期間で、少なくとも介護短時間勤務を2回以上利用できるようにしなければなりません。

なぜ必要?

家族の介護をする従業員の不安や、体力的精神的な負担を軽減し、仕事と介護を両立できるようつくられた制度です。退職防止のためにも重要です。

リスク

育児短時間勤務制度は、育児・介護休業法で定められているため、正しく取得させないと法令違反になります。

対象企業

従業員を雇用するすべての企業

POINT

企業と従業員代表で結ぶ労使協定書で、一定条件の従業員は除外できます。
【労使協定により対象外にできる従業員】
・入社後1年に満たない従業員
・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

対象者

要介護状態の家族がいる従業員

実施期間

随時

メリット

介護が必要な家族保育所の送迎や医療機関への受診が行いやすくなり、介護休業からのスムーズな復帰や、介護を理由とした退職の防止に役立ちます。従業員のワークライフバランスを守るためにも重要です。

デメリット

短時間勤務が長くなると、キャリアに対して不安など不安を抱えることがあります。介護を行っている従業員は、年齢的に社内で中堅的な立場や管理職の方が多いため、勤務時間が短くなることで他の従業員の負担が増えたり、外注やアルバイトなどを採用しなければいけないケースが出る可能性があります。

 

やること

従業員から、介護短時間勤務の申請を受ける

介護短時間勤務の開始日の前までに「介護短時間勤務申請書(任意書式)」を提出してもらいます。提出締め切り日は企業で決めることができますが、介護短時間勤務開始日の2週間前までが一般的です。

介護と仕事とのバランスで悩んでいる従業員がいるときは、制度について伝えてあげることをおすすめします。

「介護短時間勤務申請書」を受け取ったら、介護短時間勤務制度に該当する従業員であるかどうかを就業規則等で確認します。

介護短時間勤務の期間等を通知する

「介護短時間勤務取扱通知書(任意書式)」で、決定した短時間勤務の期間や勤務時間などを通知します。短時間勤務の取得で、給与などがどう変わるのかも説明を行います。

短時間勤務を取得する従業員と期間を社内に周知する

介護短時間勤務を取得することで、業務に支障がでないよう調整します。また、他の従業員の理解を得るため、介護短時間勤務制度についても周知を行います。

介護短時間勤務を実施する

介護短時間勤務を実施します。残業等で終業時刻が通常の勤務時間と変わらないなど、誤った運用になっていないか、随時確認を行います。正しく運用ができていないときは、業務内容の見直しを行いましょう。

介護短時間勤務が終了する

就業規則に記載された短時間勤務制度の期間の満了日、または従業員が希望した介護短時間勤務の取得期間の終了日の翌日から、通常の勤務時間に戻します。

POINT

介護短時間勤務の終了日までに面談を行い、通常勤務に戻ったときの労働条件や業務内容について説明をしておくとよいでしょう。

よくある質問

Q:介護のため短時間勤務以外に制度を設けることができますか?

できます。
短時間勤務制度の導入が難しいときは、短時間勤務制度に替わり、以下のいずれかの制度を導入してください。

①フレックスタイム制度
②時差出勤制度(始業および終業時刻の繰り上げ、繰り下げ)
③介護サービスの費用を会社が助成する制度

どの制度を導入するかは企業で決められます。ただし、就業規則などに制度を記載し、従業員に事前の周知をしておく必要があります。

Q:介護短時間勤務の申請は、いつまでにしなければなりませんか?

企業で自由に決められます。
介護短時間勤務の取得の申請を「いつまでにしなければならない」という法令等の定めはありません。したがって、従業員が企業に対し短時間勤務の取得申請をいつまでに行うのかは就業規則などに記載し、従業員に周知しておかなければなりません。多くの企業では、引き継ぎや業務の見直し期間を考え、短時間勤務取得の申請期日を2週間前としています。

Q:介護短時間勤務を取得予定の従業員がいます。勤務時間が短くなった分、給与を減らすことはできますか?

できます。
勤務時間が短くなった時間分は、給与から控除が可能です。

Q:短時間勤務を取得予定の従業員がいます。勤務時間が週30時間未満になりますが、社会保険は喪失になりますか?

喪失されません。
社会保険は週30時間以上(正社員の4分の3以上)勤務する従業員は加入が必要です。しかし介護短時間勤務制度を利用し、勤務時間が短縮されれば、30時間を切るケースが生まれます。そのとき、社会保険の資格を喪失するかというと、しません。なぜかというと、元々の労働契約が変わったわけではなく、国の制度を利用して一時的に勤務時間が短くなっているだけだからです。

元々の労働契約の内容を変えずに介護短時間勤務制度を利用するとき、社会保険の手続きは基本的に発生しません。しかし短時間勤務を利用する前の労働契約の内容を変更(固定残業代がなくなる、出勤日数が減って交通費がなくなるなど)するときは、社会保険の変更の手続きが必要になる可能性があります。

Q:介護休業を取得せず、育児短時間勤務を取得する従業員がいます。給与が短時間を取得した分下がりますが、社会保険料を変更できますか?

できません。
社会保険料が変更になるのは、労働契約で固定的賃金(基本給、手当など)が変更になったときです。介護短時間勤務は労働契約の変更ではないため、社会保険料の変更の手続きはできません。

Q:賞与を年2回支給しています。介護短時間勤務を取得する従業員に、賞与を支給しないようにできますか?

できません。
介護短時間勤務の取得を理由とする、解雇や降給、賞与の減給などは禁止されています。ただし、労働時間は短縮するため、短縮した時間分の減額などは差し支えありません。

難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス

介護短時間勤務制度を取得する従業員の年齢は、どうしても高くなりがちです。そのため、会社の中堅以上の従業員が介護をしないといけなくなったときは「退職」を検討されるでしょう。仕事と介護を両立しながらキャリアアップをし続けてもらえるよう、制度を活用できる環境をつくらなくてはいけません。介護は身近な課題です。1人で抱え込まないよう、また優秀な人材が会社から去っていかないよう制度についてしっかりと周知し、運用を行ってください。

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