- 介護休業の必要性と、運用しなかったときのリスク、対象者などを知る
- 従業員に提出を求める書類、ハローワークでの手続き方法など
- 介護給付金の金額、複数人でも受給できるかなど
基礎知識
介護休業に対する正しい理解を深め、制度を導入した上で、取得を希望する従業員に対してスムーズな手続きや説明ができるようにします。
言葉の定義
介護休業とは、要介護状態の人や精神に関する障害を持つ人を、2週間以上にわたって常時介護をしなければならない状態になった従業員が取得するための休業です。介護休業は、育児・介護休業法で定められています。
なぜ必要?
少子高齢化の流れを受け、働き盛りの従業員が介護に直面する事態が増加します。企業としても、介護休業への理解と取得ルールの作成、正しい運用の必要性が高まっています。
リスク
従業員が必要に応じて介護休業を取得できなければ、仕事を続けられなくなるケースも出てきます。その結果、退職という選択が増えれば、企業側は貴重な人材を失うことになります。
対象企業
すべての企業
対象者
全従業員ですが、条件によって対象外となる従業員がいます。
【育児・介護休業法により、介護休業の対象外となる従業員】
・日雇い労働者
・有期契約労働者(契約社員、パートなど)
→入社1年未満の従業員
→介護休業取得予定日から雇用契約期間93日+6か月で、その後、契約更新されない従業員
【労使協定により対象外にできる従業員】
・入社1年未満の従業員
・介護休業の申請の日から93日以内に雇用期間が終了する従業員
・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
実施期間
要介護の対象となる家族1人あたり3回まで、通算93日分までの取得が可能です。
メリット
企業の介護休業制度の充実は、対外的なアピールポイントとなります。「この企業ならば安心して働ける」と考える従業員が増え、優秀な人材が集まりやすくなります。
デメリット
介護休業制度は育児・介護休業法で定められる制度のため、要件に沿って適切に取得させなかったときは罰則があります。
やること
従業員に申請書を提出してもらう
要介護状態の家族がいる従業員から企業へ、「育児・介護休業申請書(介護休業申出書)」を、介護休業取得予定日の2週間前までに提出してもらいます。
企業は、従業員に要介護状態の家族がいる証明となる書類(診断書など)を求めることができます。
介護休業期間・制度について通知する
「介護休業取扱通知書」で、介護休業の開始予定日や終了予定日を従業員に通知します。
介護休業の開始予定日は、企業が指定できます。介護休業申請から、介護休業開始予定日の翌日から2週間未満であれば、介護休業開始予定日から2週間経過する日の間で企業が開始日を指定できます。
【例】
2月1日:育児・介護休業申請書を提出
2月10日:介護休業取得開始予定日
2月15日:申請があった日の翌日から2週間経過した日
このとき、企業が指定できる休業開始日は、2月10日~15日の間です。
介護休業中は、社会保険料は免除されません。そのため、介護休業中の従業員が負担する社会保険料・住民税の支払いの方法を伝えます。賃金についても、企業の規定に沿って伝えます。
介護休業の繰り下げ(予定より遅く)は、1回限りできます。ただし、介護休業終了予定日の2週間前までに「育児・介護休業期間変更申請書(育児・介護休業期間変更申出書)」を企業に提出する必要があります。
休業中の引き継ぎを行う
休業中に業務が滞らないよう、業務の引き継ぎ担当を決めて、引き継ぎを行います。
介護休業を取得する
従業員が介護休業を取得します。
・介護休業期間の限度は、93日です。
・複数回の介護休業取得は、上限は3回、通算93日になるまでの期間であれば可能です。
復職前面談を行い、復職させる
従業員から、復職日を書面で提出してもらい、復職前面談を行います。
・復職日を確定します
・面談では、スムーズに業務に戻れるよう業務内容の確認などを行います。
復職時は、業務の引き継ぎや休業中の変更内容などを伝え、業務が滞らないよう配慮しましょう。
介護休業給付金の申請を行う
給付金の申請は、企業が管轄のハローワークへ行います。
企業は管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書」と「介護休業給付金支給申請書」を届出します。
添付書類:対象従業員の賃金台帳やタイムカード、従業員が提出した申出書、介護の対象となる者の証明書類、振込先通帳のコピーなど
届出先:管轄のハローワーク
届出方法:郵送または持参
※届出期限は、介護終了日の翌日から数えて2か月を経過する日が含まれる月の末日まで(介護休業期間が3か月以上になるときは、介護休業開始日から3か月を経過した日の翌日から数えて2か月目の末日まで)です。
控えを保管する
ハローワークでの手続きが終了すると、企業の控えと従業員の控えが渡されます。
・企業控えは、紛失しないよう企業内で保管してください。
・従業員の控えは、速やかに本人に渡してください。
よくある質問
Q:介護休業給付金はいくらもらえるのですか?
おおよそ賃金の67%の金額です。
「休業開始時の賃金日額×支給該当日数×67%」でハローワークが計算します。計算された金額を支給単位期間ごとに支払われます。
Q:要介護が必要な家族を、2人体制で介護します。2人とも介護休業を取得したら、介護休業給付金をもらえますか?
もらえます。
介護をする2人が、それぞれ介護休業・介護休業給付金の要件を満たしていれば介護休業の同時取得ができ、ともに介護休業給付金を受け取れます。
Q:介護休業給付金の申請から入金までの期間は、どの程度でしょうか。
約1週間です。
介護休業給付金の申請書を提出した後に、「支給決定通知書」がハローワークから送られてきます。多くの場合は、決定通知書内の「決定支給日」から1週間前後で、給付金が口座に振り込まれるという流れになっています。
Q:要介護状態である証明の提出は必要ですか?
介護休業給付金の手続きには、原則不要です。
ただし、「介護休業の取得時には、家族が要介護状態である証明の提出が必要」いう企業内ルールがあれば、それに従います。
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
介護休業は、単に介護をする期間だけではなく、介護を外部に依頼したり、仕事を続けながら介護をするための仕組み作り期間でもあります。 介護はいつまで続くか見えにくいものです。さまざまなケースを想定し、従業員と相談の上、手続きを行ってください。介護休業給付金の申請期限はわかりにくいため、不明点は管轄のハローワークに問い合わせてください。また、休業給付金は一定期間雇用保険に加入している従業員のみ受け取れます。介護休業を取得できる人と、介護休業給付金がもらえる人は同じではないことを、労務担当者は理解しておきましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。