- 定時決定(算定基礎届)の概要と必要性
- 定時決定の届出方法と流れ
- 年4回賞与があります。定時決定に含みますか? など
基礎知識
定時決定は、すべての企業に関係します。労務担当者が必ず通る定例の手続きなので、正しい流れに沿ってスムーズに行えるようにしておきましょう。
言葉の定義
定時決定とは、社会保険料を1年に1回、定期的に見直すことをいいます。7月1日現在で社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入しているすべての役員・従業員の4、5、6月の賃金を「健康保険・厚生年金保険 被保険者法相月額算定基礎届」に記載をし、届出を行います。健康保険の保険者(健康保険事業の運営主体)は、協会けんぽや健康保険組合があります。ここでは、特定適用事業所以外で協会けんぽに加入している企業の役員・従業員(被保険者)について記載しています。
なぜ必要?
社会保険の届出や保険料は法令等で定められています。将来の年金などにかかわるので、正しく届出をしなければなりません。
リスク
届出をしなかったり虚偽の届出をしたりすると、法令等で「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
対象企業
社会保険に加入しているすべての企業
対象者
社会保険に加入している役員・従業員
実施期間
6月下旬~7月10日
デメリット
正しく年金事務所へ届出をしないと、調査のときに届出のやり直しや訂正が必要になります。その結果、従業員から社会保険料の不足分を徴収するなどの作業が発生し、手間だけでなく企業と従業員の信頼関係にも影響がでます。
やること
年金事務所から書類が届く
6月初旬~中旬ぐらいになると、年金事務所から「健康保険・厚生年金保険 被保険者法相月額算定基礎届」(以下「算定基礎届」)が届きます。
算定基礎届は、年金事務所が5月19日までに処理が終わった企業の情報を元に作成をしているため、在職中の従業員の氏名などがないときがあります。
送付されてきた書類の枚数などが不足しているときは以下からダウンロードしてください。
6月に賃金を支給後、書類作成に必要な書類を準備する
6月の賃金を支給後、以下を準備します。
①賃金台帳
②出勤簿(タイムカード)
定時決定では、4、5、6月に支払われた賃金の届出を行います。社会保険は支給月をベースに届出を行いますので、実際に支払われた月の賃金台帳を準備します。
【例】
賃金の締め日:末日
賃金の支払日:翌月15日
届出する賃金の支給日:4月15日(3月分)、5月15日(4月分)、6月15日(5月分)
書類を作成する
4、5、6月ごとの賃金と3か月の総額、1か月の平均額を記載します。
賃金は、社会保険料、税金などを控除する前の金額になります。基本給、役職手当、残業代、通勤手当、歩合給など毎月支払われている賃金はすべて含みます。ただし出張手当、大入り手当、年3回までの賞与などは含みません。
①対象になるのは、7月1日に在籍している役員・従業員です。
②総額は、賃金の算定となった日(出勤日、年次有給休暇など)が17日以上ある月の賃金です。
③勤務時間や勤務日数が正社員より少ないパート・アルバイトは、4、5、6月のいずれも賃金の算定となった日が17日ないときは、15、16日ある月のみの総額です。
④平均額は、②③の総額の計算した月数で算出します。
書類を作成後、年金事務所(事務センター)へ届出を行う
算定基礎届を作成後、郵送で届出を行います。算定基礎届が送付されてきた封筒の返信用封筒が同封されているので、その封筒を使用して届出を行います。
添付書類:なし
届出期間:7月1日~7月10日
届出先:事務センター
届出方法:郵送
年金事務所から通知書が届く
年金事務所から「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が企業に届きます。届出の内容に間違いがないか確認し、企業で保管します。
社会保険料を変更する
「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」の標準報酬月額に沿って、社会保険料を9月分から変更します。
従業員へ通知します
新しい社会保険料になったことを従業員へ通知します。通知の方法は、給与明細書の備考欄に記載するなど自由です。
よくある質問
Q:年4回賞与があります。定時決定に含みますか?
含みます。
昨年7月~今年6月までに支払われた賞与の合計を、12か月で割った額を各月の賃金に含めて定時決定を行います。
Q:期限が過ぎても届出はできますか?
できます。
ただし早急に届出をしてください。
Q:届出しなくてもいい役員・従業員を教えてください。
以下の役員・従業員の届出は必要ありません。
①6月1日に貴社の社会保険に加入した方
②6月30日以前に退職した方
③7月に社会保険料が変更になる方
④8月または9月に随時改定が予定されている方
Q:休業手当が支払われている月も含めますか?
含めます。
休業手当は「賃金」にあたるため含めます。
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
定時決定(算定基礎届)は毎年、必ず行う手続きなので、慌てないよう6月の賃金を支払う前頃から準備を始ましょう。社会保険料は法令等で定められているため、企業が自由に決めることはできません。間違ってしまうと、従業員の将来の年金などに影響がでます。また、年金事務所の調査で指摘され、さかのぼって届出をし直さないといけなくなるケースもあるため、正しく手続きを行ってください。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。