- 子の看護休暇の対象者や取得可能日数など、基本的な知識
- 就業規則で決めるべき項目と、管理表についてなど、運用の流れ
- 男性でも、配偶者が専業主婦でも取得できるのか、1年間の定め方など
基礎知識
子の看護休暇の内容を正しく理解し、就業規則などに記載して従業員へ周知します。
言葉の定義
小学校就学前の子どもがいる従業員が、子どもの健康診断・予防接種を受ける日や、病気やケガで看護が必要になったときに、取得できます。1年間で取得できる日数は、子どもが1人のときは5日、2人以上のときは10日です。取得は、1日もしくは半日単位で可能です。
なぜ必要?
子の看護休暇は育児・介護休業法で定められています。対象従業員が必要なときに取得できれば、子育てと仕事の両立を支援できます。
リスク
従業員が子の看護休暇を申請して、企業が取得させなかったときは、法律違反になります。
対象企業
従業員を雇用するすべての企業
対象者
小学校就学前の子どもがいる従業員
(日雇いの従業員は対象外)
メリット
子どもの定期健診や予防接種、看護のために必要な時間を確保できる環境は、女性の活躍支援につながり、優秀な女性社員の子育て離職を防ぐことができます。
やること
就業規則にルールを定め、周知する
就業規則などで子の看護休暇についての内容を決め、従業員に周知します。
【決めること】
・対象外となる従業員
・賃金の支給の有無
・1年間の期間(4月1日~翌年3月31日までなど)
従業員が子の看護休暇を取得したとき、賃金をどうするかについては、企業が決めます。賃金を支払わないというケースが多いです。
労使協定で、対象外にする従業員を決めることができます。ただし対象外にできる従業員の条件は、育児・介護休業法で定められています。
【労使協定で対象外にできる従業員】
1週間あたりの所定労働日数が2日以下の従業員 / 入社6か月未満の従業員 / 半日単位で取得されると困る業務についている従業員(例:フライトアテンダント、バスガイド、長距離ドライバーなど、業務の途中での休暇の取得が困難な職種)
対象者を確認する
対象者は、小学校始期前の子どもがいる従業員です。子どもの人数、年齢を確認し、対象の従業員が何日間、子の看護休暇を取得できるかを確認します。
管理表を作成する
子の看護休暇の残日数や取得した日、時間などを記載し、管理できるようにします。書式は任意です。
従業員から申請を受ける
子の看護休暇が必要になった従業員から、申請を受けます。取得日を明確にしておくために、書面で提出してもらうことをおすすめします。申請書の書式は任意です。
子の看護が必要になる状況は予測できません。急病などで当日に申請するときの連絡方法も決めておきましょう。(例:電話で直属の上司に始業前までに連絡し、後日、子の看護休暇申請書を提出するなど)
健康診断や予防接種など、事前に日程が決まっているものについても、「2週間前までに」など申請期限を決めておくことをおすすめします。看護が必要な理由を証明する書類の提出を求める企業もあります。
管理表に記入する
管理表に取得日を記載し、いつ、誰が取得したかわかるようにしておきましょう。企業と従業員の双方が、残日数を正しく把握している状態がベストです。
よくある質問
Q:子ども1人あたり5日、子の看護休暇が取得できるなら、子どもが3人なら、3人×5日=15日ということですか?
ちがいます。
子どもが1人で5日、2人以上で10日です。3人のときも10日になります。
Q:1年間とは、1月1日〜12月31日ですか?
ちがいます。
1年間は企業が決めます。多いのは4月1日~翌年3月31日です。その他、1月1日~12月31日や、決算月に合わせるなど、企業によって管理しやすい期間で決めています。
Q:子の看護休暇は、男性も取得できますか?
できます。
対象となる子を持つ従業員ならば、男女問わず取得できます。
Q:配偶者が専業主婦(専業主夫)の従業員でも、子の看護休暇は取得できるのですか?
できます。
配偶者が専業で、家で看護ができる環境がととのっていても、対象従業員は子の看護休暇を取得できます。
Q:4月1日~翌年3月31日までを1年間としています。4月1日の時点で、3歳になる子どもが1人いる従業員がいました。その従業員に7月1日に子どもが生まれたときの子の看護休暇の日数は、当初の5日のままで問題ありませんか?これまでの子の看護休暇の取得の申請は0日です。
問題あります。
子どもが2人になった時点で、子の看護休暇を取得できる日数は10日になります。7月1日までに、子の看護休暇を3日使用していたときは、以下にように計算します。
【1年間の定義】4月1日~翌年3月31日
・4月1日時点で、対象になる子どもが1人→子の看護休暇は5日
・4月1日~6月30日までに子の看護休暇を3日使用
・7月1日出産→対象になる子どもが2人になる→子の看護休暇の残日数は7日になる
上記のように、対象の子どもが2人になり、子の看護休暇は10日取得可能になりますが、すでに3日取得しているので、10日ー3日=7日という計算になります。
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
子どものいる従業員は、子どもの病気などで有休休暇を使い切ることも多いため、子の看護休暇は必要な制度です。ただし子の看護休暇は無給も多く、きちんと管理できている会社は少ないのが現状です。馴染みのない制度ですが、法律上必要な休暇です。まずは制度の概要を理解しておきましょう。子の看護休暇は、1年の最終日で残日数があっても次年度に持ち越しはできません。労務担当者は、有給休暇との違いを押さえておく必要があります。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。