年金事務所による「事業所調査」とは?調査の内容や事前に準備しておくことなどを解説

この記事でわかること
  • 年金事務所の調査について知る
  • 事前に準備しておくべきことと当日までの流れなど
  • 調査ではどのようなことが聞かれますか
難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆

基礎知識

日本年金機構では、対象となる事業所に対して、定期的に社会保険に関する調査を行っています。
通常は、管轄の年金事務所から「健康保険・厚生年金保険被保険者の資格及び報酬等の調査実施について (※)」という通知書が事業所にあらかじめ送付され、一定の準備期間を経て調査が実施されます。
この調査は法律に基づいて行われているため、事業所は必ず対応しなければなりません。
正当な理由がないにもかかわらず、「必要書類を提出しない」「連絡を無視する」といった調査を拒む対応については、罰則の対象になる可能性があります。
調査の通知書が届いたら、準備期間のうちに必要な書類を準備することが大切です。
※名称は一例で、管轄により異なる場合があります。

言葉の定義

「年金事務所による事業所調査」とは、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格および報酬などについて適正かどうかを確認するための調査です。日本年金機構(年金事務所)が事業所(企業や個人事業所)に対して実施します。
従業員の被保険者資格の取得・喪失に漏れや誤りがないか(加入の適正性)に加え、届け出られた標準報酬月額や賞与額が実際の報酬と合っているか(届出の適正性)などについて、賃金台帳・出勤簿・労働者名簿などにより確認します。
調査は主に3つの方法により実施しています。

調査の方法は、その対象となる事業所の実情を踏まえ決定されます。日本年金機構によれば、訪問調査は「多くの短時間労働者を使用している事業所」「算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所」「過去の事業所調査での指摘が多い事業所」が主な対象となり、それ以外の事業所などに対しては、呼び出し・郵送調査を実施するとされています。

なぜ必要?

調査は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入すべき従業員の加入漏れを防ぎ、届出の適正化を進めるために実施されています。将来的な無年金者、低年金者の防止や事業所の負担の公平性の確保も目的です。

リスク

社会保険の加入要件を満たしている従業員が未加入だったり、誤った算定基礎や随時改定を行ったりしていると、最長で過去2年分の保険料をまとめて徴収される可能性があります。

【参考:社会保険の加入要件】
①1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の従業員の4分の3以上の従業員
②厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上(※)の事業所または労使合意により申し出た任意特定適用事業所で、以下の要件すべてを満たす従業員
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・2か月を超えて雇用される見込み
・学生でないこと(ただし、夜間・通信・定時制などは加入の対象になります)
※2026年10月現在は51人以上が対象ですが、今後、企業規模要件は段階的に縮小され、最終的に撤廃される予定です。

対象事業所

社会保険適用事業所
※2025年度は、約11万の事業所が調査対象となり、「2024年10月に短時間労働者の適用拡大の対象となった事業所」などが優先的に選定されています。

対象者

全従業員(パート・アルバイト・契約社員などの雇用形態を問わない)および役員・事業主(※)
※支店などがある場合で本社で一括して社会保険の手続きを行っている場合には、支店の従業員も対象者に含めます

やること

年金事務所から書類(通知書)が到着

まず、管轄の年金事務所から「健康保険・厚生年金保険被保険者の資格及び報酬等の調査実施について」といった趣旨の通知書が郵送で到着します。
通常、通知書には調査の趣旨、調査日時、場所(事業所への訪問または年金事務所への来所)、準備する書類、年金事務所の担当者、連絡先などが記載されています。
もし、指定された日時で都合が悪い場合は変更が可能です。早めに年金事務所へ連絡し、日程調整を依頼することをおすすめします。

必要書類を準備する

年金事務所から調査実施に関する通知書が到着したら、速やかに調査で使用する書類を準備します。書類に不備や不足があると、調査に要する時間が長引く可能性があるため注意が必要です。
具体的な書類は通知書で指定されますが、「賃金台帳」や「出勤簿(タイムカード)」などが代表的です。
なお、準備にあたってはただ単に書類を揃えるだけでなく、書類相互の整合性に留意するなど、調査時のヒアリングポイントとなり得る点もあわせて意識することをおすすめします。
【例】
・残業代などが正しく計算され、賃金台帳に反映されているか
・出勤簿(タイムカード)の内容が正しく賃金台帳に反映されているか

また、管轄の年金事務所にもよりますが、準備する書類は必ずしも紙でなくてもよい場合があります。たとえば、賃金台帳や出勤簿など、従業員数が多い事業所ほど準備に時間を要する書類があります。データやファイルなどで代替できるかなど、書類の提示方法をあらかじめ担当の調査官に相談すると、準備が進めやすくなる場合があります。

社会保険の資格取得が適正かどうかを確認する

日本年金機構の近年の報告書によると、社会保険の資格取得が適正かどうかは、調査で確認される主な項目の一つとしてあげられています。今後も同様の観点で確認される可能性があるため、注意が必要です。
具体的には、賃金台帳や出勤簿に記録された実際の労働時間を確認し、未加入者がいないかを見ていきます。
未加入者がいた場合は、その労働時間の増減が一時的なものなのか、継続的なものなのかを確認します。
「退職者が出て一時的に残業が増えている」「繁忙期で残業時間が増えている」などの一時的な労働時間の増加であれば、原則として社会保険加入の対象にはなりません。調査でその旨を伝え、出勤簿などを提示することにより、調査担当者に納得してもらえる可能性があります。
一方で、実際の労働時間が2か月連続で加入要件を満たし、その後も同じ働き方が続く見込みであれば、3か月目の初日にさかのぼって加入するよう求められます。

調査当日の流れ

調査は「被保険者の資格」、「標準報酬」、「保険料」又は「保険給付」に関する項目について行われます。
これらの項目について、事前に準備した書類や当日のヒアリング内容をもとに、実態が適正かどうかを調査担当者が判断します。

なお、郵送調査の場合は、必要な書類を揃えて事前の確認が完了したら、郵送(またはオンライン)で資料を提出します。

 

指摘事項・是正への対応

調査が終了すると、その場で(または後日)指摘事項の提示があります。
たとえば「社会保険に加入すべき働き方をしている従業員が未加入」「賞与を支給したが賞与支払届が未提出」といったケースなどです。
一般的に、指摘事項については期限が設けられ、事業所は未提出の届出の手続きや必要に応じて保険料の追徴など、速やかな対応が求められます。

日頃から適正な管理を行うことの重要性

調査によって、たとえば社会保険の加入漏れが発覚した場合、最長で過去2年分をさかのぼって社会保険に加入し、保険料を納付する必要があるなど速やかに是正措置を講じる必要があります。
ケースによっては、1人の被保険者にかかる追徴額が、会社負担分と従業員負担分をあわせて数百万円以上となる場合もあります。
追徴になった場合、社会保険料の支払いは通常労使折半であることから、事業所は従業員に対して、従業員負担分を請求することになります。
しかし、従業員が「事業所の瑕疵を理由に請求を拒む」「請求額を早急に支払う余裕がない」「すでに退職している」などの理由から回収が困難になる可能性もあります。
このような労使トラブルを避けるためにも、日頃から適正な手続きを行うことが事業所や労務担当者にとって重要です。






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よくある質問

Q:調査では、どのようなことを聞かれますか?

賃金の締日、支払日、住所、事業主の変更の有無、社会保険未加入者の確認、算定基礎、月額変更、賞与支払届が未提出になっていないか、資格取得時や現在の報酬額が実際の支給額と著しく乖離していないかなどを確認されます。

Q:調査にはどのくらい時間がかかりますか?

一般的には、30分〜2時間程度です。担当者や事業所の規模によって変わります。

Q:年金事務所の調査を断ることはできますか?

年金事務所の調査を受けることは法令で定められており、調査を拒む対応については、罰則の対象になる可能性があります。
指定された調査日までに書類の準備が間に合わない、調査日に担当者が不在であるなど事情があるときは、事前に年金事務所の調査担当者(調査の案内に記載されています)に連絡をし、調査日の変更を相談しましょう。

Q:年金事務所の調査はどの程度の頻度でありますか?

年金事務所の定期的な調査は、約4年に1回の頻度で実施されることが多いです。
新しく社会保険の適用を受けた会社は、加入からおおよそ1年後に実施されることがあります。

 

HRbaseからのアドバイス

今回の記事では調査の流れや事前に準備すべきことなどについてお伝えしていきました。調査依頼があった時どのように対応するかを知っておくことも大切ですが、日頃から適正な管理をする意識を持つことが重要なポイントになります。調査依頼がいつ来てもよい状態をつくることを目指しましょう。
なお、調査当日は社会保険労務士による同席も可能です。もし対応に不安がある場合は、専門家の力を借りることを推奨します。

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