- 労働保険を一括する必要性と手続きの流れ
- 複数の事業場の労働保険を一括する手続きの流れを知る
- 労働保険の一括の手続きは必ず行わなければなりませんか? など
基礎知識
労働保険を本社で一括管理することで、労働保険料の計算など事務処理上の管理をスムーズにします。
言葉の定義
労働保険(労災保険・雇用保険)の一括とは、同じ企業で複数の事業場(本社、支店、営業所など)ごとに成立している労働保険を1つの指定事業(本社など)にまとめることです。一括には、事業の期間が決まっておらず継続する予定の事業をまとめる「継続事業の一括」と、事業の期間が決まっている事業をまとめる「有期事業の一括」の2種類があります。ここでは「継続事業の一括」について記載しています。
なぜ必要?
同じ企業にある事業場でも、労働保険は事業場ごとに成立が必要です。そのため、複数の事業場がある企業は、いくつも労働保険が成立することなります。事務処理上の管理などが複雑になるため「継続事業の一括」を行うことで管理などが簡素化されます。
対象企業
複数の事業場があるすべての企業
実施期間
随時
メリット
労働保険を一括することで手続き漏れなどを防ぎ、労働保険料の計算などをスムーズにします。
やること
各事業場の労働保険の成立を行う
事業場ごとに労働保険の成立を行います。書類は、管轄の労働基準監督署から「労働保険保険関係成立届」を取り寄せ作成します。作成後、労働基準監督署へ届出をします。
添付書類:なし
届出先:事業場を管轄する労働基準監督署
届出方法:郵送または持参
指定事業(本社など)を決める
一括して手続きをする事業場を決めます。通常、勤怠の集計や給与計算などまとめて行っている本社(本部など)になります。
継続一括の書類を作成し、届出を行う
労働保険の一括を行う事業場を決め書類(「労働保険継続事業一括認可・追加・取消申請書」)を作成し、届出を行います。
一括できる事業場は、以下の条件をすべて満たさなければなりません。
①継続事業であること
②指定事業と一括する事業場の事業主が同じであること
③指定事業と一括する事業場の「事業の種類」が同じであること
添付書類:なし
届出先:指定事業を管轄する労働基準監督署
届出方法:郵送または持参
控えを保管する
ステップ3を届出後、労働基準監督署から企業控えを受け取ります。紛失しないよう保管をしておいてください。
よくある質問
Q:労働保険の一括の手続きは必ず行わなければなりませんか?
行わなくても差し支えありません。
一括をするかどうかは、企業で決められます。
Q:労働保険の一括手続きをしています。労災事故があったときの労災保険の届出は、本社の管轄する労働基準監督署へ行えばいいですか?
届出先は、労災事故が発生した事業場を管轄する労働基準監督署です。
支店で労災保険事故が起きたときは、支店を管轄する労働基準監督署へ、本店のときは本店を管轄する労働基準監督署へ届出をします。労災保険の届出書類に記載する労働保険番号は、本店の番号を記載してください。
Q:労働保険に加入しているかどうか不明です。確認する方法はありますか?
あります。
管轄の労働基準監督署へ相談するか、または「労働保険適用事業場検索」で成立しているかどうかを調べることができます。
参考|厚生労働省サイト
労働保険適用事業場検索
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
企業内に複数の事業場があるときは、労働保険の一括を行っておくと管理や手続きの簡素化につながります。また、労働保険成立の漏れも防ぐことができます。労働保険の手続きと聞くと「難しい」「面倒」と感じる方も少なくありませんが、労働保険の一括手続きは添付資料が不要で、書類の作成も難しくありません。どうしても心配な方は、作成や届出に関することは労働基準監督署で質問してみてください。正しく制度を理解し、労働保険を成立させましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。