介護短時間勤務制度とは? 申請と運用のすべて

この記事で分かること
  • 介護短時間勤務制度の必要性と対象者
  • 介護短時間勤務の申請フロー
  • 介護短時間勤務を取得すると社会保険は喪失しますか?など
難易度と必要性
難易度
★★☆
必要性
★★★
HRbase Solutionsでの、必要性の考え方
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆

基礎知識

介護と仕事との両立をサポートし、介護離職を防ぐためには、介護短時間勤務制度を正しく理解し運用する必要があります。2025年4月からは、介護に直面した旨の申出をした従業員に対して、個別に「介護と仕事の両立支援制度等の周知」と「制度の利用意向の確認」を行うことが義務付けられました。法令に基づいた正しい知識を身につけ、介護に直面する従業員を支援できる体制をととのえることが重要です。

言葉の定義

【介護のための短時間勤務制度】
介護のための短時間勤務制度(以下、介護短時間勤務制度)は、「育児・介護休業法」に定められた制度であり、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態(要介護状態)にある家族を介護する従業員が、勤務時間を短縮できる制度です。対象家族1人につき、制度利用開始から連続する3年以上の期間で、少なくとも2回はこの制度を利用できるよう措置を講じる必要があります。

なぜ必要?

介護短時間勤務制度は、働きながら家族の介護を行う従業員が、仕事と介護を両立できるように支援するために必要です。経験やスキルを持つ人材の離職防止にも有効です。

リスク

介護短時間勤務制度は、育児・介護休業法で定められています。正しく取得させなければ法令違反とるリスクがあります。

対象企業

従業員を雇用するすべての企業

POINT

企業と従業員代表で結ぶ労使協定書で、一定条件の従業員は除外できます。
【労使協定により対象外にできる従業員】
・入社後1年に満たない従業員
・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

対象者

要介護状態にある家族がいる従業員(日雇労働者、労使協定により対象外とした従業員を除く)

実施期間

随時

メリット

介護が必要な家族の送迎や医療機関の受診が行いやすくなるなど、介護休業からのスムーズな復帰を支援できます。また、介護を理由とした離職の防止にも役立てられます。従業員のワークライフバランスを守るためにも重要です。

デメリット

短時間勤務が長くなるとキャリアに対して不安を抱えることがあります。介護を行っている従業員は、年齢的に社内で中堅的な立場や管理職の方が多い傾向があります。そのため、勤務時間が短くなることで、他の従業員の負担が増えたり、担当業務を外注したり、パート・アルバイトなどを採用しなければいけないといった、想定外のコストが発生する可能性があります。

やること

従業員から、介護短時間勤務の申請を受ける

介護短時間勤務の開始日の前までに「介護短時間勤務申請書(任意書式)」を提出してもらいます。提出締め切り日は企業で決められますが、介護短時間勤務開始日の2週間前までが一般的です。

「介護短時間勤務申請書」を受け取ったら、介護短時間勤務制度を利用できる従業員に該当しているかを就業規則等で確認します。

介護短時間勤務の期間等を通知する

「介護短時間勤務取扱通知書(任意書式)」で、決定した短時間勤務の期間や勤務時間などを通知します。通知書を渡すときは、短時間勤務の取得で、給与などがどう変わるのかもあわせて説明します。

介護短時間勤務を取得する従業員と、その取得期間を社内に周知する

介護短時間勤務を取得することで、業務に支障がでないよう調整します。また、他の従業員の理解を得るため、介護短時間勤務制度についても周知を行います。

介護短時間勤務を開始する

開始後は、残業等で終業時刻が通常の勤務時間と変わらないなど、誤った運用になっていないか、定期的な確認をおすすめします。このときに、正しく運用ができていない事実を把握した場合、業務内容の見直しを行う必要があります。

介護短時間勤務を終了する

就業規則に記載された短時間勤務制度の期間の満了日、または従業員が希望した介護短時間勤務の取得期間の終了日の翌日から、通常の勤務時間に戻します。

POINT

介護短時間勤務の終了日までに面談を行い、通常勤務に戻ったときの労働条件や業務内容について説明をしておくことをおすすめします。






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よくある質問

Q:介護のため短時間勤務以外に制度を設けることができますか?

短時間勤務制度の導入が難しいときは、短時間勤務制度に替わり、以下のいずれかの制度を導入する必要があります。

①フレックスタイム制度
②時差出勤制度(始業および終業時刻の繰り上げ、繰り下げ)
③介護サービスの費用を会社が助成する制度

どの制度を導入するかは企業で決められます。ただし、就業規則などに制度を記載し、従業員に事前の周知をしておく必要があります。なお、2025年4月より、対象となる従業員が在宅勤務等の措置を講じることが努力義務化されました。

Q:介護短時間勤務の申請は、いつまでにしなければなりませんか?

介護短時間勤務の取得の申請を「いつまでにしなければならない」という法令等の定めはなく、企業で自由に決められます。ただし、従業員が企業に対し短時間勤務の取得申請をいつまでに行うのかは就業規則などに記載し、従業員に周知しておかなければなりません。多くの企業では、引き継ぎや業務の見直し期間を考え、短時間勤務取得の申請期日を2週間前とするのが一般的です。

Q:介護短時間勤務を取得予定の従業員がいます。勤務時間が短くなった分、給与を減らすことはできますか?

できます。
勤務時間が短くなり、通常勤務に対して不足した時間分は、給与から控除が可能です。

Q:短時間勤務を取得予定の従業員がいます。勤務時間が週30時間未満になりますが、社会保険は喪失になりますか?

元の労働契約が変わるわけではなく、国の制度を利用して一時的に勤務時間が短縮されるだけなので、社会保険の資格は喪失しません。そのため、従来の労働契約の内容を変えずに介護短時間勤務制度を利用するとき、社会保険の手続きは基本的に発生しません。しかし短時間勤務を利用する前の労働契約の内容を変更(固定残業代がなくなる、出勤日数が減って交通費がなくなるなど)するときは、社会保険の変更の手続きが必要になる可能性があります。

Q:介護休業を取得せず、介護短時間勤務を取得する従業員がいます。短時間勤務を取得した分は給与が下がりますが、随時改定の対象になりますか?

介護を理由とした短時間勤務の場合、固定的賃金(基本給・手当など)の変動として随時改定の対象になり、社会保険料を変更できる可能性があります。なお、随時改定によって社会保険料の変更が反映されるのは、短時間勤務を開始した月から4か月目以降になります。

就業規則や賃金規定を確認し、随時改定の対象となるかを判断し、対象となる場合は速やかに「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」を提出します。

Q:賞与を年2回支給しています。介護短時間勤務を取得する従業員に、賞与を支給しないようにできますか?

介護短時間勤務の取得を理由とする、解雇や降給、賞与の減給などは禁止されているため、そのような取扱いはできません。ただし、労働時間は短縮するため、短縮した時間分の減額などは差し支えありません。

HRbaseからのアドバイス

介護短時間勤務制度の利用者は、親の介護に直面することの多い40代や50代の従業員が中心となる傾向が見られます。そのため、会社の中堅以上の従業員が介護に直面したときは「退職」を検討するケースも多いです。仕事と介護を両立しながらキャリアアップをし続けてもらえるよう、制度を活用できる環境を整える必要があります。介護は身近な課題です。1人で抱え込ませず、優秀な人材が会社から去っていかないよう制度についてしっかりと周知し、運用を行うことが重要です。

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