- 直行直帰のメリット・デメリットを知る
- 直行直帰制度を導入するか検討し、社内ルールを決める
- 直行直帰の移動時間は労働時間なのか?など
基礎知識
業務効率化に役立つ直行直帰ですが、ルールなしの運用はかえってリスクを招きます。正しい管理を行うため、ワークルールを決め、従業員に周知します。
言葉の定義
直行直帰とは、所属企業に出社せず直接仕事場(外注先、営業先など)に行き、そこでの業務終了後も企業へ戻らずに直接自宅に帰宅することです。外回りの営業職や介護ヘルパーなど、毎日違う訪問先で仕事を行う職種で多く利用されています。
リスク
直行直帰のルールを明確にしておかないと、顧客訪問時の勝手なマイカー使用や、業務内容のチェック体制の不足などで、トラブルが起きやすくなります。内容によっては企業に莫大な損失が出る可能性もあります。
対象企業
直行直帰を導入するすべての企業
対象者
直行直帰を行う可能性がある従業員
実施期間
随時
メリット
移動時間が短縮でき、企業全体の業務効率が上がります。企業は残業代が、従業員は拘束時間が短縮できるため、双方にメリットがあるでしょう。また出社・退勤の時間管理を従業員に任せることで裁量権が生まれ、主体的に仕事に取り組むようになります。
デメリット
勤怠管理は煩雑になります。業務のプロセスが見えにくくなり、コミュニケーションが不足することもあります。自己管理ができず、さぼる従業員が出る可能性もあります。
やること
直行直帰の制度を導入するか決める
直行直帰を導入するかどうかは、メリットとデメリットを比較して考えます。
外出が多く労働時間の把握が困難なときは、外出している間の労働時間を何時間分で計算するかを事前に決めておける「事業場外みなし労働時間制」もあわせて検討しましょう。
直行直帰のルールを決める
ルールがあやふやでは、運用後に「業務の報告がない」「勤務時間が把握できない」などの不具合が出てしまい、リスクが高まります。ルールを明確にするため「直行直帰のワークルール」を作成しておきましょう。直行直帰を事前申請制にするときは、「直行直帰許可申請書」を提出してもらうこともおすすめします。
【直行直帰のワークルールで決めること】
対象部署 / 対象者 / 勤務時間の管理の方法 / 直行直帰を行うときの事前申請の有無 / 事前を申請を行うときの申請期限 / 業務内容の報告の方法 / 業務時間の報告の方法 / 業務の指示の方法 / 秘密情報の取扱い など
直行直帰のルールを就業規則に記載する
直行直帰の制度の導入が決まったら、就業規則に記載します。従業員数10名以上の企業は、就業規則に記載後、管轄の労働基準監督署へ届出が必要です。
就業規則は、「直行直帰のためのワークルール」とは違います。ワークルールを作成し従業員に周知したとしても、大元となる就業規則への記載が漏れないようにしてください。
【事業場外みなし労働時間制の導入時】1日の労働時間を決めるときに、法定労働時間を超える労働時間を設定したときは、企業と従業員代表者の間で労使協定を結び、管轄の労働基準監督署へ届出をしてください。|事業場外労働に関する協定届(Wordファイルでダウンロード)
直行直帰のルールを従業員に周知する
ルールが決まったら、従業員に周知します。会議で配布する、掲示板に掲示する、メールを送るなどの方法で、従業員に直行直帰制度が導入されたことを、企業に合った方法で周知してください。
直行直帰を希望する従業員から申請書を提出してもらう
申請書の内容を確認し、直行直帰を認めるかを決定します。
直行直帰を実施する
ルールに沿って直行直帰が行われているかを、随時確認します。決められた報告がないなど、業務の内容が不明確なときは従業員と話し合い、必要であれば指導を行います。
よくある質問
Q:時間を決め、従業員を集合させてから仕事場に向かいました。どこから労働時間になりますか?
このときは、集合時間からが労働時間になります。
Q:直行直帰の移動時間は労働時間に含まれますか?
原則含まれません。家から仕事場に到着するまでの移動時間、仕事場から家に帰る移動時間は、通勤時間であり、労働時間ではないと考えられます。ただし、直行した仕事場から次の仕事場に行く移動時間は、労働時間に含まれます。
Q:労働時間はどのように管理すればいいですか?
管理の方法はいくつかあります。
・出勤簿をクラウド化し、スマホなどで出勤・退勤を入力してもらう
・出勤・退勤時に企業にメールや電話などで連絡をいれてもらう
・業務日報などで労働時間を見積もる など
企業に合った管理方法を選択し、正しく労働時間の管理を行いましょう。
難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
直行直帰は、ルーズな運用になりがちです。残業代の未払いなどのトラブルを避けるため、従業員の自己管理に任せすぎず、業務内容や進捗を随時把握するようにしておきましょう。また、直行直帰は従業員が勤務時間を勝手に決めていい制度でも、自由に仕事をする制度でもありません。企業ルールに沿って業務を行ってもらい、ルールから逸脱しているときは、きちんと指導しましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。