- 雇用契約書の必要性を知る
- 雇用契約書の内容を決める
- 正社員も雇用契約書は必要ですか?など
基礎知識
雇用契約書を作成していない企業もありますが、雇用は従業員との契約ごとです。後からのトラブルを避けるためにも、作成するようにしましょう。
言葉の定義
雇用契約書とは、企業と従業員の間で「勤務をすること」と「賃金を支払うこと」を契約する書類です。勤務時間や賃金の支払日、働く場所などの労働条件を記載している企業が多いです。
雇用契約は口頭でも差し支えなく、したがって書面作成は法令等では定められていません。しかし、別途「労働条件を通知する」義務が法律上定められているため、多くの企業では「雇用契約書」で雇用契約と労働条件の通知を同時に行っています。書面にしたときは、署名・押印が必要です。ここでは、雇用契約書に労働条件の記載があるケースについて記載しています。
なぜ必要?
企業と従業員のあいだで労働条件を明確にすることで、お互いの意思の確認ができます。また、書面などで作成しておくことで、後日「給与の額が違った」などのトラブルを回避できます。労働条件の通知は法令等で定められています。
リスク
労働条件を通知していないときは、労働基準法違反となり「30万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
対象企業
すべての企業
対象者
すべての従業員
実施期間
随時
やること
従業員の労働条件を決める
従業員ごとに、就業規則に沿って労働条件を決めていきます。
【決めること】
①雇用契約の期間
②契約期間を更新するときは、更新の条件
③就業場所
④業務内容
⑤始業・終業の時刻
⑥残業の有無
⑦休日、休暇
⑧賃金に関すること(基本給、手当、賃金の締め日・支払日など)
⑨退職にの関すること(解雇事由を含む)
⑩賞与や臨時に支払われる賃金(退職手当、退職金などを除く)
⑫従業員が負担する費用(制服代、食事代など)
⑬安全衛生に関すること
⑭職業訓練に関すること
⑮災害補償や業務外の私傷病に関すること
⑯表彰や制裁に関すること
⑰職に関すること
※①~⑨は、書面などにしなければなりません。
※⑩~⑰は、企業で決まりがあるときは書面にしなければなりません。
雇用契約書を作成する
ステップ①で決めたことを元に、雇用契約書(任意書式)を作成します。
雇用契約書は、A4サイズの1枚の書式を使用することが多いです。契約内容が1枚におさまらなければ「就業規則第◯条から◯条の定めによる」として、詳細については記載しなくても差し支えありません。
従業員に雇用契約書を提示する
作成した雇用契約書を元に、従業員に労働条件の説明を行います。双方が納得したら契約書に署名または記名・押印をします。 雇用契約書は2部用意しておき、企業と従業員それぞれが1部ずつ受け取り保管します。
もし、雇用契約書の内容に相違があったときは話し合いをして、企業から契約内容が適切であることの説明をするか、内容を再検討をしてお互いが納得できるようにします。
雇用契約書に沿って運用する
雇用契約書に沿った勤務時間や給与などで運用できているか確認をします。雇用契約書と、実際の勤務時間や休日などが異なるときは、雇用契約を見直して実態にあった契約を結びなおします。
よくある質問
Q:雇用契約書は、必要ですか?
必要です。
正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわりなく、労働条件を決めて書面で通知しなければなりません。雇用契約書に労働条件を記載し、企業と従業員で内容を確認して雇用契約を結んでください。
Q:昇給したときは、雇用契約書の結び直しが必要ですか?
必要です。
昇給で労働条件が変わります。いつから変更になるのか、昇給後の賃金がいくらになるのかなどを書面にまとめて、再度雇用契約を結んでください。
Q:雇用契約書は紙で渡さないといけませんか?
本人が希望したときは、紙以外でも差し支えありません。
SNSやFAX、メールなどで通知できますが、印刷や保存がしやすようにしておかなければなりません。したがって、PDFなどで添付されることをおすすめします。
参照:厚生労働省サイト
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Q:雇用契約書と労働条件通知書は何が違いますか?
「雇用契約書」は、企業と従業員の間で「勤務すること」と「賃金を支払うこと」を約束する書面です。署名、押印が必要です。
「労働条件通知書」は、始業・終業時刻、賃金、賃金の締め日や支払日などの働く条件のことを言います。労働条件は、原則書面で従業員に通知しなければなならないと、法令等で定まっています。労働条件を通知をするだけなので、署名・押印は不要です。多くの企業では「雇用契約書」と「労働条件通知書」を分けずに、「雇用契約書」に労働条件を記載して、企業と従業員で契約を結んでいます。
Q:雇用契約書の保存期間は何年ですか?
退職日から5年間です。
ただし当分の間は3年となっています。
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
雇用契約書は 「働く条件」を明確にし、従業員が安心して働けるようにするものです。企業と企業で結ぶ契約と同様に、詳細を決めて、双方で確認が必要です。労務はよくわからないから、なんとなく難しいからなどの理由で書面などにせず、口頭で労働条件を伝える企業が見受けられます。法令等で定まっているからではなく、トラブルを防ぐためにも「働く条件」をお互いはっきりとさせておきましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。