- 1年単位の変形労働時間制について知る
- 1年単位の変形労働時間制の導入する流れなど
- 年間カレンダーは、時間外労働分も含めて作成できますか?など
基礎知識
自社が1年単位の変形労働時間制の対象企業か、また制度活用にメリットがあるかを知り、正しく運用しましょう。
言葉の定義
1年単位の変形労働時間制とは、1か月を超え1年以内の期間で1週間を平均して40時間以内にする制度です。ただし、制度を利用するためには事前に労働基準監督署へ労使協定を届出しておかなければなりません。この記事では、1年間のカレンダーを作成し制度を導入するケースについて記載しています。
なぜ必要?
季節によって忙しい時期とそうでない時期がある業種や、休日の日数を年間で決めている企業などが労働時間の調整を行うために必要な制度です。1日の労働時間を調整することで、休日の日数が増加し、対象期間の労働時間を削減することができます。
リスク
労働基準監督署へ労使協定の届出を行わず1年単位の変形労働時間制を利用したときは、労働基準法違反となり、「30万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
対象企業
1日または1週間で法定労働時間の設定ができない企業
(美容業、介護業、運送業など)
対象者
対象企業で勤務する従業員
実施期間
随時
メリット
1年間(対象期間)を平均して週平均40時間以内におさめることで、時間外労働の削減につながります。
デメリット
時間外労働の計算が煩雑になり、手間が増えます。また、1年単位の変形労働時間制は、恒常的な時間外労働や休日出勤、勤務時間の変更を前提としている制度はありません。そのため、カレンダーで決められた出勤日などの変更は原則できません。
やること
1年単位の変形労働時間制を導入するか検討する
1日8時間以内、週40時間以内で労働時間を設定することが難しい事情があるときは導入を検討します。
【1年単位の変形労働時間制の導入を検討する理由例】
①1年間で繁忙期・閑散期がある
②年間で休日日数を決め、月ごとの労働時間の調整が必要である など
(例:年末年始の長期休暇の時期は労働時間を減らし、他の月の働時間を増やす)
1年単位の変形労働時間制のルールを決める
1年単位の変形労働時間制のルールを決めていきます。
【決めること】
①対象期間の起算日
②対象期間
③企業カレンダー(出勤日と労働時間)
④労使協定の有効期間
対象期間の労働時間を平均し週40時以内(年間の総労働時間2085時間以内)になるように決めます。
労使協定の作成などを行う
就業規則に1年単位の変形労働時間制の制度内容の記載や労使協定、カレンダーの作成を行います。
従業員に制度の説明をする
従業員に1年単位の変形労働時間制の説明をします。
労働基準監督署へ届出をする
就業規則と労使協定、カレンダーは、管轄の労働基準監督署へ届出するため2部ずつ用意します。労働基準監督署へ届出後は受付印を捺印された後、1部は企業控えとして返還され、1部は労働基準監督署で保管されます。なお、従業員数10人未満のときは就業規則の届出をしなくても差し支えありません。
また、届出した就業規則、労使協定、カレンダーは従業員に周知が必要です。
添付書類:なし
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参
運用をスタートする
カレンダーにそって勤務がされているか随時確認をします。出勤日と休日の変更などが行われているときは理由を確認し、原則変更がないようにしましょう。
よくある質問
Q:1か月ごとにカレンダーを作成して、勤務日などを決められますか?
決められます。
ただし、勤務を開始する30日前までには、従業員にカレンダーを周知しておく必要があります。
Q:1年単位の変形労働時間制は、1年未満の期間で利用できますか?
できます。
1か月を超え1年以下の間の期間で制度を利用できます。
期間は、3か月や6か月など企業の業務の都合に合わせて利用できます。
利用する期間内の労働時間は、労働時間を週平均40時間以内にしなければなりません。出勤日や休日などのカレンダーを作成するときは、週平均40時間を超えないようにしてください。
計算式
40時間✕対象期間の週数(歴日数÷7)
Q:カレンダーは、時間外労働分も含めて作成できますか?
できません。
時間外労働分を含めてカレンダーを作成し、週平均40時間を超えてしまうと1年単位の変形労働時間制が適用になりません。また、カレンダーを労働基準監督署へ届出を行うとき、届出を拒否および指導されます。1年間でカレンダーを作成するときは、年間の総労働時間が2085時間以内になるようにしてください。
Q:1年単位の変形労働時間制の時間外労働は、対象期間の実働の労働時間からカレンダーで決められた労働時間を引いた時間分で計算できますか?
できません。
1年単位の変形労働時間制の時間外労働は、1年間に実際に働いた総労働時間(週平均40時間以内になるように設定した労働時間の合計)を超えた分ではありません。時間外労働の計算は、1日、1週間、対象期間のそれぞれの期間で確認していきます。詳しくは、添付の「1年単位の変形労働時間制の導入の手引」の「7割増賃金の支払い」を参考にしてください。
参考・ダウンロード|厚生労働省
1か月の変形労働時間制 |
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
1年単位の変形労働時間制を利用するとき、労働基準監督署へ届出は1回のみでありません。継続して制度を利用するときは、労使協定の期間が切れる前に労働基準監督署への届出が必要になるため注意しましょう。
労使協定の期間が切れているにもかかわらず、届出をしていない企業をよく見かけます。企業の慣例で1年単位の変形労働時間制を利用していたとしても、労働基準監督署へ届出していないと制度を利用していると法令上認められません。そのときは、法定労働時間の原則(1日8時間以内、週40時間以内)の労働時間となります。制度の内容を理解し、正しく運用ができるようにしましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。