- 無期雇用転換の特例について知る
- 申請書の入手、届出などの一連の流れを知る
- 無期雇用転換の特例は、企業単位ですか? など
基礎知識
人生100年時代がやってきます。定年後の従業員の働き方については、すべての企業が考えておく必要があります。
言葉の定義
無期雇用転換の特例とは、有期契約の嘱託社員の無期雇用転換の申込権を発生させない制度です。制度を利用するためには、都道府県労働局から認定を受けなければなりません。
なぜ必要?
無期雇用転換への申込権が発生すると、一度企業を退職した従業員が再度、無期雇用契約になります。無期雇用契約になると従業員が自主的に辞めない限り80歳、90歳になっても雇用しなければなりません。また、企業から退職を勧奨すれば「解雇」になるときもあります。特例の制度を利用して、企業の負担を防ぎます。
対象企業
嘱託社員、定年を迎える従業員がいるすべての企業
対象者
定年を迎える従業員または定年後再雇用されている従業員
実施期間
随時
メリット
無期雇用転換の申込権が発生しなければ、定期的に労働条件の見直しができます。
高年齢者は、身体面や体力面などの低下に個人差があるため、労働条件を定期的に見直すことで従業員にあった働き方を選択してもらえます。
やること
無期雇用転換の申込権について検討する
定年後、有期契約の嘱託社員から無期雇用転換の申込があったときに対応できるかどうかを検討します。対応が難しいときは、無期雇用転換の特例の届出を検討し、準備を進めます。
従業員に周知する
無期雇用転換の特例を導入することを従業員に周知します。
高年齢者が働きやすくなるための対策を検討する
無期雇用転換の特例の届出には、高年齢者が働きやすくなるような対策が必要になります。対策は以下の中から1つ以上選択しなければなりません。
①高年齢者雇用推進者の選任
高年齢者が働きやすいよう作業内容や職場環境の見直し、働き方の調整などを行うために、知識や経験のある推進者を選任します。
②職業訓練の実施
高年齢者のもっている経験や知識などを活用できる訓練を行います。
③作業施設・方法の改善
身体面や体力面が低下した高年齢者が、業務で力を発揮できるように設備などの改善を行います。
④健康管理、安全衛生の配慮
身体面や体力面の低下の踏まえて、健康状態や事故防止の配慮などを行います。
⑤職域の拡大
身体面や体力面の低下の影響が出にくい職務を用意するなどの対策を行います。
⑥職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
高年齢者の知識や経験などを活かせる配置や評価をする仕組みなどの整備を行います。
⑦職務等の要素を重視する賃金制度の整備
高年齢者の知識や経験などを活かし、安心・継続して働けるよう賃金制度の整備を行います。
⑧勤務時間制度の弾力化
健康状態や体力など個人差に対応した勤務時間制度を導入を行います。
運用がしやすい①を選択する企業が多いです。
無期雇用転換の特例の届出を行う
無期雇用転換の特例の書類(「第二種計画認定・変更届」)を作成します。第二種計画・変更届と添付書類は、原本と写しを用意します。届出後、認定まで約1か月かかります。認定書は再発行できないため大切に保管してください。
参考:厚生労働省サイト(記載例(「高年齢者雇用推進者の選任」を行う場合)
添付書類:就業規則(定年に関する部分)など
届出先:都道府県労働局 雇用環境・均等室(部)
届出方法:持参または郵送
認定書の受け取り方法は下記2つの方法があります。
①窓口へ取りに行く
事前に都道府県労働局 雇用環境・均等室(部)または管轄の労働基準監督署へ認定書の公布日を確認し、日程を調整してください。
名刺・印鑑を持っていき、窓口で受け取ります。
②郵送してもらう
返信用封筒を第二種計画・変更届と一緒に提出してください。
返信用封筒は、手渡しかつ追跡ができるよう配達証明付き書留郵便料金分の切手を貼っておきます(レターパックプラス可)。
就業規則に特例について記載をする
無期雇用転換の特例の認定後、就業規則へ特例の記載をします。
労働基準監督署へ届出をする
就業規則を管轄の労働基準監督署へ届出するため2部ずつ用意します。労働基準監督署へ届出後は受付印を捺印された後、1部は企業控えとして、1部は労働基準監督署で保管されます。なお、従業員数10名未満のときは就業規則の届出をしなくても差し支えありません。
また、届出した就業規則は従業員に周知が必要です。
届出先:管轄の労働基準監督署
届出方法:郵送または持参
雇用契約書を作成する
特例が追記された雇用契約書を作成し、対象となる従業員の雇用契約を結び直します。
参考:厚生労働省サイト
労働条件通知書 |
ダウンロード
※「契約期間」の「有期雇用特例措置法による特例の対象者の場合」の
「無期雇用転換申込権が発生しない期間」「Ⅱ(定年後の高齢者)」の記載が必要です。
よくある質問
Q:無期雇用転換の特例は、企業単位ですか?
企業単位です。
事業場(支店、営業所など)が複数あるときでも、特例の届出は企業単位になります。
Q:就業規則で無期雇用転換の申込権は発生しないことを決めていますが、特例の届出しなければなりませんか?
しなければなりません。
企業の就業規則で申込権が発生しないと決めていても、法令等が優先されるため申込権は発生します。申込権を発生させないときは、必ず無期雇用転換の特例を届出をしてください。
Q:無期雇用転換の特例は、必ず届出が必要ですか?
必要ありません。
企業が無期雇用転換の特例を希望しないときは、届出は不要です。
ただし、特例の届出していないと無期雇用転換の申込権は発生します。
Q:企業の定年年齢を超えて、新しく雇用した従業員も無期雇用転換の特例の対象になりますか?
なりません。
無期雇用転換の特例の対象は、定年を迎えた企業にそのまま継続して雇用されている嘱託社員です。定年年齢を超えてから採用した従業員は、対象になりません。
【例】企業の定年年齢:60歳
◯対象になるケース
55歳で入社し定年後、嘱託社員として勤務している従業員
◯対象にならないケース
61歳で雇用された従業員
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難易度と必要性
法的に必要★★★ / 条件により必要★★☆ / 法的には不要だが会社には必要★☆☆
HRbaseからのアドバイス
定年を迎えても、働けるうちは働き続けたいと希望する従業員の方も増えてきています。ただし、高年齢者は体力・身体的にも変化があるため、雇用契約を定期的に見直せる体制を整える必要があります。高年齢者には有期契約で勤務してもらい、契約更新のタイミングで都度、働き方について話し合いをされるのがおすすめです。経験や知識が豊富な高年齢者の方に、長く安心して働いてもらえる環境を作っていきましょう。
社会保険労務士。株式会社Flucle代表取締役/社会保険労務士法人HRbase代表。労務管理の課題をITで解決できる社会を目指す。HRbase Solutionsは三田をはじめとする社会保険労務士、人事労務の専門家、現場経験の豊富なプロと、記事編集者がチームを組み「正しい情報×徹底したわかりやすさ」にこだわって作り上げているQAサイトです。